[とくダネ!ナオキ 第112話]お願い?!
とある幼稚園のフェンスに次の看板がかかっていました。

「幼稚園の看板だからひらがなとカタカナだけで書いたのだな」で済ませられないのが筆者の悪い癖です。
漢字を使っていないので、対象者は小学校低学年の子供たちだと思われます。だとすると、疑問に思うことがあります。「おねがい」というタイトルです。この内容だと、本来「禁止」と書くべきなのですが、幼稚園側が地域社会の大人に気を使ってこのような表現にしたのではないかと推測します。そこには地域社会とうまく共存していきたいという幼稚園側の思いが感じられます。
読み手に対してここに書いてあることを守ってほしいと頼む意味を込めて使っているのでしょうが、このような心遣いを、対象者の子供たちに理解してもらえるでしょうか。私は疑問に思います。「おねがい」に込めた微妙なニュアンスを理解できる子供はまれだと思います。
「ママにおねがいって頼んでも、かなえてもらえないことが多いから、『おねがい』は必ずしも守らなくてもいいんだ」と考える子供がいそうな気がします。ここは「おねがい」というタイトルを削除したほうが書き手の意図がストレートに子供たちに伝わると思います。あるいは、赤字で「きけん」と書くのも有りでしょう。いずれにせよ、この看板に大人に対する気遣いは不要です。
また、この看板は、ボール遊びをした結果として起こりうる2つの結果について書いています。最初はボール遊びの結果フェンスやガラス窓などの幼稚園の施設が損害をうける可能性があるということ、次に「道路」すなわち「ここ」でボール遊びをすることは遊んでいる本人が危険な状態にあるということです。
この順序だと、私には施設が損害を受けるのは迷惑だというニュアンスを強く感じますが、たぶん子供はそんなひねくれた受け取り方はしないでしょう。
私が関わる取扱説明書でも「お願い」というタイトルで禁止事項を書いているのをよく見かけます。これも、禁止という表現は読み手に対して行動を強制していると受け取られることを恐れてこのようなあいまいな表現にしたものと思われます。しかし、製品の故障に、さらには利用者の危険に結びつきかねない大事な指示情報に、このようなあいまいな表現を使うことは読み手の不利になる可能性があります。
「お願い」を採用したときにこのようなネガティブな影響を考えたことはあるのか聞いてみたいものです。
「お願い」だけではありません。読者に気を遣うあまり、安全上のご注意や使用上のご注意の文章表現がマイルドになりすぎているケースが多くみられます。これでは、情報発信側の意図が正しく伝わらない可能性が大きくなります。このような情報はもっとストレートな表現を使うべきだと私は考えます。