[とくダネ!ナオキ 第12話]プロをも戸惑わせるマニュアル
今回はちょっと緩めのテーマだとお聞きしましたが?
先日グリルの付いたガステーブルを買い替えました。この製品のマニュアルがこのテーマにぴったりだと思って、今日はちょっと閑話休題としてこれを取り上げて見たいと思います。
テーマにぴったりとは?
私でさえマニュアルに戸惑ったというハナシです。そう言うと悪い例ということになりますが、こういうことがユーザーを戸惑わせる原因になっているとしてお聞きいただきたいと思います。
ですから、メーカー名は伏せておきましょう。(笑)
まずはどのようなことに戸惑ったのでしょう?
まずは80ページあるマニュアルの表紙を見て、このマニュアルはいくつかの製品の共通マニュアルになっていると理解しました。これは一般的によくあります。
表紙には品名と型式が羅列され、ともにアルファベットと数字だけで構成されています。
この情報から、自分の買った製品ははたしてどれなのか、製品の識別にいきなり躓きました。
マニュアルを読み進めると、安全上の注意にその識別情報が書いてありました。製品の側面に販売型式が記載された銘板があるという情報です。ただし、正確には製品の識別情報ではなく、銘板に適合ガスが記載されているので、それ以外のLP(プロパン)ガスなどでは使用しないでください、という情報です。
つまり適合ガスの注記のところに記載があったということです。銘板には販売型式が記載されているようだと、たまたま気付いたということになります。
これでは、製品の識別情報を記載しているとは言えませんね。また、これを見つけられなければずっと自分の製品の品名や型式がわからないということになります。
自分の製品がどれなのかよくわからないことはよくありますね。それにより記載されている機能がわからないとか、実は機能自体が付いていなかったという話はよく耳にします。
製品の識別子によって、製品の何が違うのかという情報は重要です。表紙に品名と型式が列記されているので、その識別子はどこにあるのだろう?と思って探しました。
それがどこにもなく、巻末の仕様までいくと、さらに型式名や販売型式というものがここでだけ記載されています。結局、これらはユーザーには何もわかりません。末尾のLとRは左右の違いかな?くらいは想像できますが、書いてないのですから想像でしかありません。
製品が梱包されていた段ボール箱には型式の印字がありましたが、これはあくまでも製造管理や物流のためのものでしょう。ユーザーには知らされていない情報ですから、それを探して型式を理解するには至りません。
それは困りましたね。
読めば読むほどいろいろ戸惑いました。このマニュアルは複数製品の共通マニュアルになっていることは既に述べました。でも、構造や付属品の違いを書き分けるために品名で場合分けされています。ですから、やはり自分の使う製品の品名や型式がわかっていないといけないのです。
探し回ると、修理を依頼するときは品名と販売型式を連絡してくださいと書いてあります。そもそも表紙には品名と型式の羅列があって、型式名や販売型式ってなんだろうって?(笑)
なるほど、商品の識別子には商品名・品名・型式・型式名・販売型式の5種類が存在するのですね。商品名以外は英字と数字の文字列ですから、その使い分けをユーザーに理解してもらうこと自体無理があるような気がします。他にはどういったことがありましたか?
製品の設置までかなり悩みました。製品を開梱すると、本体と付属品があります。その付属品の1つがいったい何なのか、これを判別するのに相当時間がかかりました。
ごとくやグリルなどは馴染みのあるパーツですのですぐに判別できますが、その中に、長方形の金属部品が2つ入っていました。これがわかりません。グリルの排気カバーなどは直感的にわかりますし、どういう目的のものか察しがつきます。でも、この部品だけはそれがまったくわからないので、取り付けようがありません。
マニュアルを見ても、名前も目的もわからないのですから、どこに載っているのかさえ見当もつきません。
全体像のイラストを見ても、設置の「部品の取り付け」を見ても、このような形状の部品はすぐに見つけられません。
説明されていなかったということですか?
いえ、実はマニュアルの数か所に載っていました。
ここで重要なのは、ユーザーがその部品をどのように識別できるかということです。梱包材や部品に名前が付いていればまだしも、そのような情報がまったくありません。
ですから、まずこのマニュアルに欠落しているのは付属品(同梱品)の一覧です。ユーザーが部品自体で名称が識別できなければ、その情報を真っ先にユーザーに提供する必要があります。ユーザーは形状と名称が結び付いて初めて理解したということになります。
たいていのマニュアルの冒頭部分に付属品情報が記載されているのはそのためです。ですが、このマニュアルにはそれがありません。
結局どのように判断できたのですか?
それが出てくるのは56ページのお手入れでした。ここに、グリル周りのお手入れ情報として、グリルを構成する部品が掲載されていたのです。このお手入れ情報で、この部品はグリル内に取り付ける部品なのだということが初めてわかりました。
こんな後ろに全体像があったんだ、ってね。(笑)
設置するために80ページのマニュアルを読み進め、各部の名前ではこの部品が判別できず、巻末のお手入れでこの部品が初めて理解ができ、各部の名前や設置に戻ってやっと組み立てができました。
ガステーブルでこんなに苦労するとは思わなかった。(笑)
昔流行ったゲームブックみたいですね。
もう1つ付け加えれば、このグリル内に取り付ける部品は、いったい何のための部品なのか、ということが説明されていません。汚れを防止するための部品なのか、安全上のものなのかどうかさえわかりません。
つまり私にはなじみのない形状の部品があり、これはこういう目的のために取り付ける部品です、という概念説明がないのです。
そうですね、コンセプト(概念説明)があってタスク(手順説明)に進むというのが原則ですから、マニュアル構成が良くないのかも知れませんね。
恐らく汚れを防止するための部品だと思いますが、何のための部品かやはり正確にはわかりません。メーカーに問い合わせるしかありませんね。
もし安全設計上の部品であれば、言わずもがな、重要インシデントになりかねません。
取り付けなくても使える部品なら、取り付けずに使用してしまうという可能性もありますね。他にもまだありますか?
その付属品情報ですが、巻末の仕様に付属品として部品名だけが記載されています。
「単一電池、マニュアル、レシピブック、オーブン用プレート、専用取っ手、グリル内に取り付ける部品」とあります。
この部品がここに載っていたのですが、形状がわからないので識別できませんでした。
さらなる疑問は、ごとくや排気口カバー、グリル関係の部品は付属品として扱われていません。どういうことでしょう?
ごとくや排気口カバー、グリル内の機構は本体に取り付けられていたのですか?
いえ、梱包では他の部品と同様に本体とは別になっています。
何が付属品で、何がそうでないのか理解に苦しみますね。
そうだよね。だからすべてを示した付属品(梱包)一覧がないのかも知れません。いずれにしてもユーザーにはその理屈は考えてもわかりません。
それと専用取っ手に※印が付いていますが、この注釈説明がない。どこにあるんだろう?
そのページ上のタイトルの下にありますね。
ホントだ。普通、注釈って※印より下にあるよね。(笑)
なるほど、ここまででもちょっと不思議なマニュアルだと思いますが、ひょっとしてまだありますか?
仕様には都市ガス用(12 A/13 A)とLPガス用の仕様差が記載されていますが、品名や型式にその違いを見出すことはできません。つまりこの製品がどちらであるのか、これも不明です。
購入するときはどうやって選びましたか?
もちろん13 A用で購入しました。ただ、この製品が本当に13 A用であるかどうか、銘板を見るしかわからないのです。つまり品名や型式にはその識別を持たせていないということだと思います。
話はマニュアルに戻りますが、80ページありますので情報量は十分なのだと思いますが、何が一番わかりにくくさせているのでしょう?
確かにマニュアルとしての情報量は十分です。ただし、先ほど私が挙げた例のように、基本的なところが足りない、あるいは抜けていると思います。
ですから、すぐに確認したいことが確認できないというのが大きな問題で、構成と情報の出し方が良くないですね。
ゆえに戸惑ったというハナシです。
なるほど、やはりマニュアルを侮ってはいけませんね。(笑)
では次回はこのマニュアルで模擬評価していただけますか? 改善ポイントだけでも構いません。私も参考にしますので。