[とくダネ!ナオキ 第22話]街で見かける不思議な安全標識
今回は街で見かける安全標識というネタですね、ちょっと閑話休題的なお話でしょうか。
そうです。デパートや駅などにあるエレベーターやエスカレーターにはいろいろな安全標識を含む注意書きが表示されています。いくつかその写真を撮ってきましたのでご紹介します。
これはデパートのエレベーターに貼り付けられていた安全標識ラベルです。
なにやら禁止マークの中にいろいろ入ってますね。
そうなんですが、まず『ひもやコードがドアに挟まれないように乗ってください』と書いてあります。禁止マークが使われていますが、いったい何を禁止しているのでしょう?これでは指示しているだけです。
恐らく、日本エレベータ協会がひな型的に発行している安全標識ラベルだと思いますが、禁止マークを使いながら何を禁止しているのかさっぱりわかりません。
それにひもやコードと言われても、この画では非常にわかりにくいですね。(笑)
これはポスターくらいのサイズですか?
いえ、エレベーターのドアに貼り付けられた幅10cm程度のものです。
でしたら画がごちゃごちゃしていますし、わかりづらいですね。
これは駅のエスカレーターの壁に掲示されたものです。エスカレーターに乗りながら目に入るように工夫されています。
手作りのようなので、駅員さんが頑張って作ったのかも知れません。右のものは効果的だと思います。短い文章で的確に言いたいことを伝えています。
ただ、左側は完全にルールに反しています。
禁止マークの中に人が急いでいるような画がありますから、エスカレーターを駆け上がったり駆け下りたりすることを禁止していますね。これのどこがルールに反しているのでしょう?
標識自体は誤りではないのですが、「危険」の表記に関しては、黒の背景ではなく赤色を使う必要があります。「危険」という文字は黄色の文字に赤の縁取りをしています。これはルールをまったく無視した標識になっています。
三角マークに「危険」を組み合わせて四角い枠で囲むと、ISO 3864-2における潜在危険重大度パネルのデザインになってしまいます。従って、この場合は赤が背景の白抜き文字でなければならないのです。
これは地下鉄のホームゲートです。
これは駅のホームゲートですが、すごく良くできています。注意事項と禁止が2つ。ピクトグラムも文章もすごくシンプルでわかりやすいですね。
そしていちばん下に警告マークを入れて、音が鳴りやむとドアが閉まると伝えています。
これには「危険」というシグナルワードは使われていませんね。以前にも触れましたが、「危険」というシグナルワードはもはや意味を持ちません。「警告」や「注意」の方がまだ意味を持つ場合があります。
これも地下鉄のホームゲートです。こちらはホームゲートではなくホームドアと呼んでいますね。
わかりやすく、こちらも良いですね。
これも地下鉄です。さらにシンプルでわかりやすくなっています。
先ほどと同様ですが、一番シンプルですごく良くできています。「のりださない、立てかけない、かけこまない、立ち入らない」と4つの注意書きがすごくまとまって進化している感じです。
なるほど、確かにいちばん洗練された感じがします。
これを見るとすごく進化しているのに、マニュアルはちっとも進化しませんね。(笑)
マニュアルは相変わらずものすごくいっぱい書いてわけがわからない。このようにシンプルにまとまっている方が当然わかりやすいですよね。
単純に比較することはできませんが、やはりパッと読んだ人がすぐにわかることが理想です。
今度はJR東日本のホームドアです。
これはまたずいぶんシンプルですね。でも先ほどと同じく、禁止マークが使われているのに何を禁止しているのかわからないパターンですね?
そうですね、ドアに触れるな、というのなら理解できますが、「ドアに注意」だけでは禁止マークの意味がなくなります。同じホームドアでもこれだけ違うんですね。
説明責任だけではなく、伝える義務が大事なのです。これでは伝わりませんね。でも先ほどの地下鉄のホームドアのように、世の中にはきちんと伝わっている例もあります。
このように駅の安全標識はずいぶん良くなりましたが、エレベーターやエスカレーターにはちょっとがっかりします。
これはエスカレーターの乗り口付近の手すりに貼られた安全標識ラベル群です。
エスカレーターの手すりにこのような注意書きがあっても、ほとんどの人はこれを読みとれません。位置が悪すぎます。立ち止まって読むことなど、常に人が動いているエスカレーター乗り口では許されません。
道路に目を移しました。これは歩道橋のエスカレーター(乗降口の手前)です。
この位置であれば読む気になれば立ち止まって読むことはできます。でも次に乗ろうという人の邪魔になるかも知れませんね。
それに、下の2枚は廃止された(確か2006年だったと思う)JISに規定されていた安全標識が使われています。拡大図を示します。
は、現在は道路標識に使われるだけです。一般にこのマーク自体に違和感はないと思いますが、エスカレーターのような設備にはJIS Z 9101で規定された次の一般警告標識を使わなくてはなりません。
さらに、驚いたことには新旧両方の警告標識が同じ場所に危険というシグナルワードと組み合わせて使われているのです。デザイナーさんにとっては規格などどうでもいいことなのかも知れませんが、この貼り紙を提供したと思われる(一社)日本エレベーター協会には古いステッカー類については見直しをしていただきたいと思います。
それと老婆心ながら、同協会がホームページで使っている「禁止」の安全標識は斜線の向きが逆です。一般警告標識には黒の縁取りがありません。直したほうがいいと思いますね。
それにしても前回は製品の標準使用期間という経産省の見本の話でしたが、今回は交通機関や道路ですから国交省ですよね。道路標識が統一されているようにこういう安全標識も統一したらよいと思いますが。
そうですね。今回は「危険」というシグナルワードを使うべきか否か、説明内容が適切かについては言及しませんでしたが、日本エレベーター協会に対してはこれで本当に伝わっていますか? 伝える気がありますか?と思います。前回のテーマと同様に伝わっていなければ伝えたことにはなりません。
ありがとうございました。