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[とくダネ!ナオキ 第53話]画竜点睛を欠く情報

明けましておめでとうございます。今年も読者の皆さんがうなるとくダネをお願いします。
ということでお屠蘇気分がまだ抜けない新春にちなんでお酒のネタだとか?

とあるスーパーのワインコーナーで次のようなワインの値札を見かけました。2つの値札は密接に並べて表示されています。

ワインコーナーの値札

ワインコーナーの値札(メーカー情報は塗りつぶしています)

お正月らしくワインの紅白ですね。(笑)

それぞれの値札の左側にあるチャートを見てください。

私は辛口の白ワインが好きです。ですから甘辛の表示をまずは見るのですが左の赤ワインは横軸に表示されているのに、右の白ワインは縦軸に表示されています。これが問題です。

2つの値札が並んでいるときヒトはまず左から見てしまうでしょう。左の表示を見て辛口は星が右にあると覚えてしまいます。それから、右の値札に目を移すと、星の位置だけを見てこの白ワインは中辛口と判断してしまうわけです。
辛口ではないと判断して次のボトルに目が移るのは自然でしょう。これは店にとっていいことなのでしょうか?

同感ですね。店により表示が違うのは当然としても同じ店舗内であれば表示に一貫性がないとダメですよね。せめて主軸となる甘口と辛口は同じ軸にならないといけません。どうしてこんな当たり前のことがわからないのかと思ってしまいます。

そうですよね。別の白ワインのチャートが次のようになっていました。

それに気付いてあらためて適当な白ワインを求めましたが、白ワインのチャートはさすがに同じ形式のようです。

これは甘そうな白ワインですね。買い間違えたらがっかりするパターンです。

そこでチャートを見ていてわからないことが生じました。「やさしい」とか「キレのある」という表現が何を表しているのかがわかりません。
一見優しい言葉ですが、これだけでは正確には伝わりません。

一般に、赤ワインはまずフルボディー(重い)かライトボディー(軽い)かで判断し、白ワインは辛口か甘口かで判断するといわれます。だから、赤ワインの縦軸がボディーの重さを表していることは想像できますが、白ワインの「やさしい」が何を指しているのかイメージできません。

確かにこういう表現はあまり見ない気がします。

正解は次のとおりでした。これは先ほどのワインではないのですが、別の場所で見つけた初心者向けのワインのラベルがこのようになっていました。

赤ワインのボトル上の表示

白ワインのボトル上の表示

どちらも分かりやすい。私はこの表示を読んで初めて前記の白ワインの表示の横軸が「酸味」であることがわかりました。つまり、前記の値札には必要な情報が欠けているのです。

文字数を削減して読みやすくしようとするのはいいことなのですが、必要な情報まで削減してはダメですね。一方、ワインの製造者が必要な情報を的確にユーザーに届けているのは素晴らしいと思います。

なるほど、これはわかりやすいと思います。私は軽めの赤ワインを冷やしてピザとかでがぶがぶやるのが好きなのですが、ちょうどこの赤ワインくらいがいいですね。(笑)

ワインから話しは変わりますが、情報不足というより必要な情報を隠してしまった例がこの写真です。

これはとある店舗の電子決済端末の写真です。これと同じものが10台くらい並んでいます。

私は交通系電子マネー(Suica)で決済しようとして、上側のガイドに従ってSuica片手にはどこかどこかと探しても見つかりません。
赤地シールの「下のマーク」の矢印の方向を探しても読み取り部が見つかりません。

Suicaの利用方法をこれだけ貼り付けてもわからないのは致命傷ですね。

結局、赤地のシールでマークが隠されていたのです。

マークにスキャン」という表現も引っかかりますが、ここで問題にしたいのはそこではなく、上側のガイドは最初から端末に表示されていたもので、赤地のシールは店舗で貼ったものだと思われます。

「下」は「シールの裏側」の意味だったのですね。これはシールを貼った人を含め知っている人だけに分かる表現でしょう。かなりの人は「下」は矢印の方向と考えるのではないでしょうか。スキャンという表現がわかりにくいので店舗でシールを貼ったと思われますが、肝心のマークを隠してしまったので、どっちもどっちの結果になってしまったということですね。

さらに、「電子系交通マネー」という表現はご愛敬です。

上のガイドだけではわからない人が続出したからそれを補う意味で追加のガイドを貼り付けたものの、余計にわかりにくくなったという典型的な例ですね。
そもそも「交通系電子マネーはマークに読み取り部を近づけて、音が鳴るまで動かさないでください。」で良いのではないですか?
あるいは矢印だけで次のようにすればと思います。

情報不足という意味では次の写真の中央にあるポスターにも問題があります。新宿駅周辺の地下街にあるポスターです。

地下街のポスター

この写真では何のポスターかわかりにくいですね。

拡大したのが次の写真です。

ポスターの拡大写真

牛すき煮湯葉巻かつ御前1890円ですか。美味しそうですが結構いい値段ですね。このポスターのどこが問題なんでしょう?

良く見てください。この牛すき煮湯葉巻かつ御前はどこで食べられるんでしょう。ポスターの何処を探しても提供する店の名前が見つかりません。このポスターの周辺、見える範囲では、このポスターに向かって右後方に飲食店が2件、左後方には喫茶店が1件あります。しかし、このような料理を出す店ではありません。周りを見渡して視界に入る範囲にはそれらしい店は見つかりません。この地下街に詳しくない人にとっては役に立たないポスターです。

私には店の見当がつきました。そこで地下通路を少し歩いて右折した先の通路にあるとんかつ屋に行ってみました。するとありました、店の入口に同じデザインのA4サイズのPOPが。
どうやら、店内用のPOPをそのまま拡大してポスターにしてしまったようです。POPは店内に設置するものなので店名は必要ありません。しかし、店外に貼るポスターには店名は必須です。店名を入れ忘れたこのポスターは画竜点睛を欠いていると言えるでしょう。店の位置を示す地下街の地図があるとさらに良くなると思います。

思慮深いというか、それを狙った広告なら「おっ」と思いますが、どうやらこれを掲載した人に配慮が欠けていたということですね。
今年も画竜点睛のあるとくダネをお願いします。

徳田直樹 プロフィール