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[とくダネ!ナオキ 第23話]音響用押しボタンは誰のため?

つい先日、昼食に出かけたときに信号のある横断歩道で次のような表示が目に留まりました。ここは片側2車線の道路にある横断歩道で、夜間にはボタンを押さないと歩行者信号は青になりません。

夜間歩行者用押ボタン

夜間歩行者用ボタンですね。やはりオリパラ開催に向けてでしょうか? 複数の言語で表示されてますね。関西では見たことがない表示です。

他にもないかと思って大きな交差点を調べると、似たような表示が見つかりました。ここでは夜間でも歩行者用信号は青になるようです。

音響用押ボタン

音響用押ボタンとありますのでこちらは視覚障がい者用ですね。信号が青になると音が鳴るタイプでしょうか?

両者ともに日本語の下に英語、中国語(簡体字)、韓国語(ハングル)で説明が表示されています。その下には3文字の言語コードが11か国語分書かれています。これはISO 639で定められた言語コードです。さらにその左にはQRコードのようなものが描かれていました。

二次元コードの下に「Multilingual」と書かれていますね。やはり私は見たことがありません。

私もその時まで気が付きませんでした。やはりオリパラ用に設置されたものでしょう。試しにiPhoneのQRコードリーダーをかざしてみても、何の反応もありませんでした。

やはり専用のリーダーが必要なのですね。

後日ネットで調べてみると、《東京五輪に向け、外国人が安全に道路を横断できるよう、警視庁交通管制課が、15言語に対応する押しボタン式信号機の表示板を製作した。(中略)表示板上のコードを専用アプリ「Uni-Voice」で読み取れば、フランス語やドイツ語など計11言語の音声で表記を読み上げる。20年までに五輪の競技会場や宿泊施設などに計約3500枚の表示板を順次設置する。》という記事をネットの産経ニュースで見つけました。

Uni-Voiceですか!? 今回は知らないものばかりです。

Uni-Voiceは特定非営利活動法人日本視覚障がい情報普及支援協会が開発した音声コードで、これを読むにはAndroidまたはiPhone用の専用アプリをダウンロードしなければいけません。

音声コードと言っても、二次元コードから文字情報を読み取って、読み上げソフトによりその文字が読み上げられるというアプリです。

ここで問題なのは、オリンピックで来日する外国人にはアプリをダウンロードしなければならないことを知るすべがないことです。QRコードみたいだがスマホをかざしても読み込めない。私が直面したようにそれで終わりです。

Uni-Voice

Uni-Voiceの画面

〇特定非営利活動法人日本視覚障がい情報普及支援協会
https://www.javis.jp/

せめてQRコードリーダーに反応してアプリが案内されたら良いと思いますが。

そうですね。Uni-Voiceの二次元コードは独自の仕様(規格)なので、これではせっかく11か国語も用意した翻訳データは無駄としか言いようがありません。ただし、日本に来る外国人のほとんどの方は簡単な英語は読めると思いますので、英語表示が無駄というわけではありません。

実際にどういう使われ方をするのか、ということが想定できていないのです。Uni-Voice自体は、NPOの活動理念に基づき視覚障がい者向けに開発された仕組みです。主に行政機関が視覚障がい者宛の通知書を発行する際、文面をアプリが読み上げることでそれをケアしています。日本在住の外国人にも有効かも知れませんし、点字に代わるものとしても有効かも知れません。QRコードよりはるかに多くの文字が扱えます。

その機能を利用してこのような信号の表示に応用しようとしたのだと思いますが、使い方が分からないということはほとんど役に立っていないと思います。こうなると典型的な役所仕事です。

確かに、歩行者用押ボタンと音響用押ボタンのUni-Voiceは、外国人に対してどれだけ活躍したかは想像に難しくないですね。

3文字の言語コードも、一般的に知っている人がどのくらいいるでしょうか。これらを見て、他の言語にも対応していると分かれば、人に教えてあげることができるかも知れません。たとえば、ZHOを見て中国語に対応しているとわかれば、中国人に教えてあげることができます。でも、そのコードと左にあるUni-Voiceとの関係が直ぐにわかるとは思えませんね。

ZHOやRUSが何語を示すかすぐにわかる人は、翻訳にまつわるお仕事をされている方でしょうね(笑)

夜間歩行者用の表示は読んだ人自身のための表示です。では、音響用押ボタンの表示は誰のためのものでしょう? 音響自体は信号が見えない人に信号が青であることを知らせるためのものです。信号が見えない人はボタンも表示も見えません。

信号が見えない人のためにボタンを押すのは誰でしょう? 付き添いの人であれば音響は要りません。障がいを持つ人を付き添いの人が直接誘導するからです。

しかし、一人で交差点を渡ろうとする信号が見えない人の存在を第三者が離れた位置から簡単に認知できるでしょうか? 仮にスマホにUni-Voiceアプリを入れた外国人が、この表示に気が付いて、説明を聞き、ボタンを押すころには障がいを持つ歩行者は横断歩道を渡ってしまっているのではないでしょうか。

杖や振る舞いで信号が見えない人だと判断できる場合、ほとんどの人は障がいを持つ人に直接声をかけて、寄り添うように誘導していく姿はよく見かけます。声をかけてボタンのある場所まで移動し、そのボタンを押してはいさようならはまずあり得ません。誘導するなら音響は要らないのです。

どうしても音響を使いたいなら、歩行者信号が青の間は自動的に音を流せばいいのです。その場合はボタンも表示も必要ありません。

常に音が流れるのがうるさいというクレームがあったのでしょうか?

大きな交差点であれば、指向性の強いスピーカーで横断歩道内だけをカバーすれば、自動で音を流してもクレームは来ないと思います。なぜ音響用押ボタンを設置したのか、私には理解できません。

Uni-Voiceの設計思想がどうだというのではなく、このような使い方が間違えているということですね?

そうです。発想は良いと思うのですが、使う場面の利用想定がまったくできていません。こういう中途半端な仕事をおもてなしの一環だと勘違いしているから役所仕事と揶揄されるのです。このままでは明らかに税金のムダ遣いで終わってしまうでしょう。

ありがとうございました。

徳田直樹 プロフィール