[とくダネ!ナオキ 第101話]使用情報は「利用者用情報」へ
あけましておめでとうございます。
101回目の記事を、新しい年の始まりとともにお届けできることを嬉しく思います。よくここまで続けてこられたなと、自分でも感慨深いものがあります。
さて、今回は「利用者用情報」という、第70話で取り上げたけれども、読者の皆さんにはまだまだなじみのうすいであろう用語を取り上げます。
一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会では、これまで「使用情報(information for use)」と呼んでいたものを「利用者用情報(information for users)」と呼ぶことになりました。従来の「使用情報」という言い方は、一般の人には意味が分かりにくい面があり、その内容が「利用者に向けて提供される情報」であることが伝わりやすいよう、より平易な表現として「利用者用情報」と呼ぶことにしたのです。
この変更は、JIS X 0153の「適用範囲」にこの規格がソフトウェア以外の製品の利用者用情報に適用することが可能であると記載されていること、また、第70話でも取り上げたように、JIS X 0153の「利用者用情報」の定義の注釈に次の記載があることを根拠としています。
用語“利用者用情報”はIEC/IEEE 82079-1で使われた“使用情報”の同義語として使っていて、かつ、そのように定義されているが、一般にはそれぞれの概念は似ているが同一ではないと認識されている。
つまり、用語としては同じ概念を指しつつ、日本語では利用者に理解されやすい表現へと言い換えた、ということです。つまり、使用情報を機械的に利用者用情報に置き換えても問題はありません。
私自身も、従来の「使用情報」という表現にはわずかに違和感を抱いていました。というのも、“information for use” のforが持つ「〜のための」というニュアンスが、「使用情報」という日本語ではうまく伝わりにくいと感じていたからです。
「使用情報」と聞くと、製品と一緒に付属してくる情報だけを指しているようにも受け取れます。そう考えると、本来の意味よりも範囲が狭く見えてしまう可能性があります。一方で、「利用者用情報」という表現であれば、利用者のために提供される情報全般、すなわち、製品の導入、使用、保守、廃棄といったライフサイクルのあらゆる場面で必要とされる情報まで含めて示せます。つまりこの呼び方は、使用の場面に限らず、利用者が製品と関わる過程全体を支援する情報であることをより正確に伝えてくれるのです。
JIS X 0153:2024とJIS X 0154::2025はどちらも利用者用情報に関するJISです。これら2つの原案作成委員に名を連ねている立場としては、両規格の活用と利用者用情報という用語の使用をせつに皆様にお願いする次第です。