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[とくダネ!ナオキ 第30話]トリセツとは

今回はずいぶんシンプルなテーマですね(笑)

一般社団法人テクニカルコミュニケーター協会(以下、TC協会)は、取扱説明書を表す表現として「トリセツ」という言葉を使うようになりました。さらにFacebookに公開グループとして「トリセツを楽しむコミュニティー」を最近開設しています。

公開グループということは誰でも参加できるということですね?

そうです。当然TC関係者やトリセツにまつわる仕事をされている方が多いのですが、トリセツに興味を持たれている方、あるいは学生さんなど、誰でも参加できるオープンなコミュニティーです。 興味がある人はディスカッションやガイド、トピックなどをぜひご覧いただきたいと思います。

テーマはトリセツを楽しむということですから、グループを大いに悩ませ楽しませるご意見、ご質問は大歓迎です。ご遠慮なく投げかけてください。

トリセツを楽しむコミュニティー(https://www.facebook.com/groups/enjoy.torisetsu)

現在は何人くらい参加しているのですか?

まだ開設してひと月しか経ちませんが、すでに100人以上のメンバーが参加しています。出来たてのグループですから、投げかけにはみんなすぐに反応してくれると思いますよ。(笑)

素人みたいな素朴な疑問でも良いのですか?

ご存じのようにTC協会は毎年シンポジウムを開催しています。このコミュニティーから新たな課題やテーマが発掘され、たとえばそれがパネルディスカッションなどのテーマにつながっていけば理想かなと考えています。そういう意味で、新鮮なご意見やご質問は大歓迎です。

なるほど、トリセツを真剣に楽しむという主旨はわかりました。
今度とんでもない質問を考えておきます。(笑)

ではそれも含めて、ここで取扱説明書とは何かをはっきりさせておきましょう。

使用情報の国際規格であるIEC/IEEE 82079-1:2019 には、使用情報の定義が次のように書かれています。

使用情報:製品の供給者が提供する情報で、対象製品をそのライフサイクルにわたって安全、効果的かつ効率的に使用するための概念、手順及び参照資料を提供するもの

私は「取扱説明書は製品と一緒に提供される使用情報である」と考えています。ここで重要なのは、取扱説明書は製品の供給者が提供するものだということです。

トリセツという言葉はこのところ一般の人々にかなり浸透してきたと感じます。キッカケは西野カナさんの「トリセツ」という歌のような気がします。紅白でも歌われたので「トリセツ」が一般の人たちに知られたことは間違いないと思います。この「トリセツ」の対象製品は歌っている本人なので取扱説明書の定義どおりですね。

そして最近、「トリセツ」はテレビでよく取り上げられるようになりました。TBS系列の「マツコの知らない世界」でトリセツが取り上げられたことは記憶に新しいところです。そして、今現在NHKが放映している「あしたが変わるトリセツショー」の影響は大きいと思います。

この番組は”食・健康・生活、あらゆるテーマを、最新科学と大実験・大調査をもとに解き明かし、真のお役立ち情報満載の「トリセツ」にしてご紹介!”と謳っています。各放送回で取り上げたトリセツはダウンロード可能です。(NHK:あしたが変わるトリセツショー 「トマト」のトリセツ

この第1回の放送で使われた“「トマト」のトリセツ”をダウンロードして読んでみました。

「トマト」のトリセツの表紙(NHKのホームページより)

「トマト」のトリセツの表紙(NHKのホームページより)

全11ページで目次はありません。見出しを拾うと次のとおりです。

トリセツ01 味と栄養を最大限に引き出すには日本のトマトこそ加熱すべし
  • 「日本のトマト」は海外と何が違うの?
  • 日本のトマトの魅力を引き出す調理法とは?

奥田シェフ直伝! フレッシュトマトソースのパスタ

材料
MEMO
手順①~手順⑤

トリセツ02 超絶時短!あらゆる料理が激うま 魔法のトマト加工品とは
  • “トルコ”で見つけた魔法のトマト加工品
  • なぜどんな料理にも使えるの?

トマトペースト活用レシピ バターチキンカレー編

材料
MEMO
手順①~手順④

トマトペースト活用レシピ キムチ編

材料
手順①~手順③
袋とじコーナー
保ショー書

これは前述の取扱説明書の定義には当てはまらないかも知れません。対象製品はトマト、供給者は不特定多数のトマト生産者、トリセツの制作者はNHKなのですから。

トリセツの内容は対象とするトマトの特徴説明です。対象製品の概要と言えますね。それにトマト料理の作り方です。こちらは手順説明ですね。 トマト料理のレシピを対象製品と考えれば、NHKが作った製品という考え方もできますから、定義を拡大解釈すればトリセツと言っても良いと思います。

表紙には「取扱説明書」というタイトル、品番、「保管用」という表示、『いつでも見られるところに大切に保管し、必要な時にお読みください。』という注意が記載されています。 見出し項目を見ても、まさに取扱説明書のパロディなのだと思います。「保ショー書」は「保証書」のパロディですね。実によくできていると思います。これで一般の人々がトリセツに親しんでもらえるとTC業界人としては実にうれしいことです。

なるほど、トマトという食材の概念説明、調理方法をその手順としてよくできている感じがしますね。

ところが、第2弾の“「血管」のトリセツ”は少し問題があります。(NHK:あしたが変わるトリセツショー 「血管」のトリセツ)

でた! これにまでトリセツ評価ですか!?

これはもう性(さが)というか、職業病みたいなものですが(笑)、重要な指摘が1つありますので聞いてください。

最初のページで『極めて健康な体を持つのが、南米ボリビアに住むチマネの人々です。推定年齢100歳以上の女性も元気そのもの。なぜ、彼らは健康でいられるのでしょうか?』と疑問を投げかけた後に、次のように結んでいます。

『進化医学の専門家、マイケル・ガーヴェン教授の研究によると、ある年代のアメリカ人は51%の人で血管が硬かったのに対し、チマネの人たちではたったの8%。健康のヒミツは、柔らかな血管にあるのです。』

これは血管が柔らかでありさえすれば長生きできると錯覚を与えるような表現です。長生きの要因は決して血管の柔らかさだけではないはずで、食べ物や環境なども大きな要因のはずです。これでトリセツと言えるでしょうか。前述の「トリセツを楽しむコミュニティー」でもこのことが話題になりました。同協会の黒田氏は、これはガイドブックだと言っています。

確かにトリセツでは誤解や錯覚を与えるような表現はNGですが、それほど大きな問題ですか?

定義に示すようにトリセツは対象製品を「安全」に効果的、効率的に使う方法を説明しなければならないからです。ここで、業界関係者もトリセツの普及にしっかり取り組んでいることをお伝えしておきたいと思います。

(公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 西日本支部には商品の使いやすさとマニュアル研究会というグループがあります。そのグループが消費者にアンケート調査を行いました。その結果、若い人ほど操作が簡単な製品を使うときはトリセツを読まない傾向があることが判明しています。 その結果をもとに、児童・生徒と保護者、指導者向けに取扱説明書の読み方を紹介したチラシを作製しており、ここからダウンロードもできます。

その1ページ目をご紹介します。

なるほど、どんな製品も使う前には必ず取扱説明書を読む、ということを啓蒙するチラシですね。

子供の頃からトリセツを読む習慣をつけることは非常に大切です。このチラシはトリセツの大切さを若い人たちに知らせようとする良い試みだと思います。

確かに、トリセツを読まなかったことによるけがや事故も枚挙にいとまがありませんね。特にWebなどで取扱情報が電子化されることも多くなった今、提供する側もより真剣に取り組んでいく必要がありますね。

ですから、トリセツはユーザーの安全を第一に考え、かつ正しい情報を提供しなければならないのです。間違っても誤解や錯覚をユーザーに与えてはいけない。

冒頭のコミュニティーのハナシに戻りますが、それも含めて、しっかり楽しく考えていきましょう、ということなのです。

ありがとうございました。

徳田直樹 プロフィール