[とくダネ!ナオキ 第57話]業界規格とJIS
散歩中にビール工場の裏を通ったとき、生ビールの樽が山のように積まれているのに目を引かれました。
つまり飲みたくなった、ということですね。(笑)
樽を見ればすぐにわかりますが、サントリーのビール工場です。
それを眺めていると、樽が積まれているパレットがほぼ他社のものであることに気づきました。拡大したのが次の写真です。
アサヒ、キリン、サッポロの大手ビール製造会社にとどまらず、日本盛や二階堂など日本酒や焼酎の製造会社、はたまたCALPISなどの清涼飲料水のメーカーも見受けられました。
当のサントリーのパレットを探すと、最初に見上げたところの木の陰に、樽を乗せずに数枚積まれているだけでした。
業界的な慣習なのか、流通の問題なのか、いずれにしてもパレットはカオスですね。
ここまで堂々と他社のパレットを使用しているのですから、各社間で何らかの申し合わせがあるに違いないと思い、パレットについて調べてみました。ヒントになったのはサッポロのパレットの角に書かれた以下の表示でした。
写真ではわかりにくいですが「Pパレ共同使用会」と書かれています。
早速ググってみると一般社団法人Pパレ共同使用会のWebサイトが見つかりました。
さすがの好奇心です。普通の人は気にも留めませんよ。(笑)
サイトの記載によれば、会の目的は「加盟社のビール9型プラスチックパレット(略称:Pパレ)の適切な管理と、Pパレの共同利用促進に取り組む」ことだと記載されています。
Pパレ共同使用会の加盟各社が使用しているプラスチックパレットはビール9型プラスチックパレットと呼ばれ、業界規格としてサイズが決められているようです。
2023年9月現在、128社が加盟しているそうです。加盟社一覧を見ると、有名な酒造会社がずらり。
おそらく日本の酒造会社のほとんどが加盟していると思われますね。加盟社はパレットを選別せずに回収・出荷ができるので、大きなコストダウンができるのは想像に容易いですね。
それは合理的な取り組みだと思います。ある意味自主規格とも言えますね。
そこで、ほかの業界ではパレットサイズがどうなっているかが気になって調べてみました。
ビール9型プラスチックパレットと同様の形状をした平パレット呼ばれるパレットには、JIS Z 0601というJIS規格があることが分かりました。
この規格のパレットサイズは、1100mm×1100mm×144mmだそうです。しかし、インターネットで調べてみると、これ以外のサイズのパレットも多く使われているようです。冷凍食品業界では1,200mm×1,000mm、化学業界では1,220mm×1,220mmのサイズのものが使われているそうです。
コンテナにも規格があることは知っていますが、トラックなどによる運送を考えた場合、やはり規格は統一されていた方が好ましいですよね?
レンタルパレットの業界団体である一般社団法人日本パレット協会のWebサイトを見ると、その協会が所有しているのはプラスチック製平パレットが多く、その中でもJIS標準サイズのものが圧倒的に多いことが分かりました。
やはりJISですか。
そうですね。酒造業界は瓶ビールのケースやビア樽のサイズなど、特別な事情によりビール9型というサイズを業界規格にしたのだと思います。
瓶ビールのケースやビア樽がきっちり収まるパレットということですね。
パレットのサイズのように一般消費者が使用する機会がほとんどないものにおいては、利便性と経済性を優先しても問題がないので業界規格が幅を利かせていると考えられます。
JIS規格のパレットを使ってすき間ができても危険ですし効率も悪いと思いますから、そういうケースは無理やりJIS規格に従う必要はないと思いますね。
しかし、電子レンジのように一般消費者が使用する製品で、扱いを間違えれば生命に関わるような製品では、利便性より安全性が優先されます。そのような家電製品にはジャンルごとに安全性に関するJIS規格があり、それに従って製造会社は製品を作っています。
ジャンルごとにJIS規格があるのですか!
電子レンジのJISはJIS C 9250です。温度調節器などが故障した状態で試験し、火災のおそれがないことや、使用中に操作する取っ手の表面温度を55℃以下にするなど、安全面を細かく規定しています。
そして、電子レンジを製造する家電製品の製造会社は、このJISに従って電子レンジを製造しています。
家電製品の製造会社は他の家電製品であっても、該当するJIS安全規格に従って製品を製造しています。
だから我々は安心して家電製品を使うことができるのです。
日本国内向けの海外製品はそれらJIS規格に従っている必要があるのでしょうか?
海外製品がJIS規格に従う必要は必ずしもありません。
それについては別の話題で取り上げましょう。