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[とくダネ!ナオキ 第20話]家製協ガイドラインと国際規格

前回はたまたま私が購入したロボット掃除機のマニュアルを評価していただきましたが、こういったマニュアルにおける安全情報の記載について、基準にするガイドラインや方針はあるのでしょうか?

国内では一般財団法人 家電製品協会(以下、家製協)の安全表示に関するガイドラインが長年1つの基準となっています。このガイドラインは1993年に策定され、2015年の第5版が最新となっています。

当時を振り返ると、1995年にPL(製造物責任)法が施行されたわけですが、それに合わせて製品安全協会のPLセンターなども開設されました。当時はマニュアルを作る側も手探りの状態でもあったと言えますし、明確な指針がなかったのですから、家製協のガイドラインがやはり基準となっていきました。

現在でもそのガイドラインが基準となっていますか?

一応デファクトスタンダードとなっています。ただし、その質問には、ちょっとグレーな部分があります。と言うのは、このコーナーで何度か話題にしている国際標準や国際規格の内容と矛盾する部分が出てきているからです。

要求や規定されていることが異なるということでしょうか?

もちろんすべてではないですが、特にこの安全情報の扱いにおいて基準が異なっています。例えば、その記載位置について、ガイドラインではこのように記載されています。

4.2.3 表示位置(取扱説明書)

警告表示の説明要素と個別の警告表示を冒頭にまとめて記載することを基本とし、使用者にとって最も理解されやすい本文中の関連箇所に重複記載してもよい。

重複記載を行う場合は、警告説明文の主旨は同じで相互矛盾が無く、危害・損害の程度の表示は、都度表示するほか、書体や色、レイアウトなどで目立つように配慮する。

なお、設置・設定や廃棄などの操作説明以外に関する項目は、該当箇所に単独で記載してもよい。

出典:「家電製品の安全確保のための表示に関するガイドライン(第5版)」一般財団法人 家電製品協会

安全情報はマニュアルの冒頭にまとめて記載することを基本として、本文にも重複して記載する(してもよい)と捉えられますね。
確かに現状のマニュアルはほとんどこの記載方法になっています。ただ、以前から俎上に上がっていたように、冒頭に安全情報をいっぱい書かれていても覚えていられませんし、設置や操作時に必要な安全情報はその箇所に記載されていないとわかりにくいということでした。

まさにソレで、国際規格のIECやISO、米国のANSIなどで要求されている規定とは矛盾したことを言っています。今の国際規格の考え方では、安全表記という全般情報はグループ化された安全メッセージとして冒頭にまとめて記載する。そして、ある手順を行う際に伝えるべき安全情報は、警告メッセージとしてその文脈の中で説明しなさいと要求しています。

では、現実問題として現状どちらを基準にすべきなのでしょう?

そこが問題なのです。実情、ダブルスタンダードになっているのは紛れもない事実です。ただ、国際規格で要求している規定の方がより効果的だと思いますし、グローバルな時代を鑑みると国際規格をスタンダードに考えた方がより現実的で合理的だと思います。これはTC協会も同じ見解です。

ほかにも、ガイドラインに例示されている記載として、次のような例があります。

家製協ガイドライン 3.2

出典:「家電製品の安全確保のための表示に関するガイドライン(第5版)」一般財団法人 家電製品協会

この例では、 「警告マーク警告」のシグナルワードが青色の背景帯でデザインされていますが、このような形状のものをシグナルワードパネルといい、国際規格では背景にオレンジ色を使う必要があります。青色は指示の意味があります。また、IEC82079-1ではシグナルワード(危険・警告・注意)は翻訳すると効果がなくなる可能性があるという考え方です。それぞれ具体的に「溺死する危険」などとフレーズで記述した方がより効果的だとされています。

ということは家製協のガイドラインに従ったマニュアルを、例えば英語に翻訳してアメリカやEUに輸出しようとすると、規格適合の観点からNGになりますか?

この例はあくまでも国内向けの商品でしょうけど、輸出する際は当然国際規格に適合した「Safety Information」として再構成する必要があります。私の知っている大手メーカーは日本版と輸出版の安全情報のデザイン構成を変えています。マニュアル冒頭の安全表記の部分にはシグナルワードパネルは使っていません。

逆に、前話のように米国メーカーのロボット掃除機を日本市場に投入しようとすると、日本向けに安全情報を再構成しなければならない、あるいは国際規格と家製協のガイドラインで齟齬があり、どちらのスタンダードに従えばよいのか、戸惑ってしまうことになります。再構成するということは余計なコストも掛かってしまいます。

安規情報については、国際規格の方がより合理的だと思いますし、冒頭にまとめて記載することについては、家製協のガイドラインだけがIECやISO、ANSI規格と異なっているということでした。
でしたらダブルスタンダードではなく、国際規格をスタンダードにした方が好都合では?

TC協会としてもそういう見解だということは先に述べました。もちろん私もその方が好ましいと思っています。第一、国内と国外用の安全情報を別立てする必要はありませんし、その合理性は何もありません。各国の法律に適合させるための記載は仕向け先ごとに対応しなければなりませんが、内容そのものを異にする必要は何もないのです。国内で言えば、昔の慣習を引きずっているだけです。

ということは、家製協が国際規格の要求を取り入れて国際標準に近づけていけばよいのではないですか?

ですが、変えようとしないのです。と言えば反感を買いますが、実は家製協のガイドラインが国内では一部の産業機器も含めてすでにある程度受け入れられた基準になっています。だから変えたくない、という作用が働いているのです。

それが今回のロボット掃除機のマニュアルのような例につながっているかも知れませんね?

そういう部分もあるでしょうね。

ありがとうございました。

徳田直樹 プロフィール