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[とくダネ!ナオキ 第21話]標準使用期間と寿命の関係

今回は製品の寿命がテーマだとか?

今年、46年間使用した扇風機が発火して、火災が発生するという事故がありました(NITE PSマガジン Vol383 2021年6月22日号)。ユーザーの誤使用も含めて、残念ながらこのような事故が後を絶ちません。

確かに古めかしい扇風機は今でも見かけることはありますが、それにしても46年とはすごいですね。

一般的な寿命をはるかにオーバーしています。そういう事故もあって法律も整備されたわけですが、現在、経済産業省が「長期使用製品安全表示制度」で見本として提示しているラベルがこれです。

経済産業省「長期使用製品安全表示制度」の表示見本

出典:経済産業省「長期使用製品安全表示制度」より抜粋

現状、ほとんどのメーカーはこの通りに記載しています。

「設計上の標準使用期間を超えて使用されますと、経年劣化による発火・けが等の事故に至るおそれがあります。」とあります。ですが、この日本語を理解できるユーザーのレベルはかなり高いと思います。

見たところ普通の文言だと思いますが?

よく読んでみてください。ユーザーにいったい何を伝えていますか?

確かに、使用期間を超えると経年劣化により事故の可能性がある、とは理解できますが、具体的なことは何ひとつ書かれていませんね。

まず標準使用期間は、寿命と言う言葉にはまったく結び付かない言葉です。あくまでも機械が標準的に使用できる期間であり、それを超えても故障しない限り使えます。ですから、標準使用期間という言葉の中に、寿命という言葉のニュアンスはありません。標準使用期間を超えるとその恐れがあると言っているだけです。

ただし、たいていの製品は10年、20年も使い続ければ絶縁劣化してくるのは当たり前です。一般的な電気製品における経年劣化とは、たいていの場合絶縁劣化から始まります。結局は絶縁体が持たなくなるんです。そうすると漏電する、発火するという事故につながります。それが製品の寿命と言うことです。

ですから、標準使用期間は寿命ではありません。安全に使用できる期間と言う意味ですね。

そうすると、ユーザーは標準使用期間を超えても壊れない限り使えるじゃないか、と考えますね。

そうです。そのように解釈しますよね。でもそれが絶縁劣化による発火事故が起こってからでは遅いのです。つまり、製品には寿命があり、そのうち寿命が来ますよとは伝えていません。

確かに耐用年数や部品保持期限などはサポートの範囲としてよく目にしますが、寿命という言葉はあまり見かけないですね。 どうして寿命という言葉を使わないのでしょう?

単純には、メーカーは寿命と言う言葉を使いたくないのです。ですから、経産省の見本も、なんともアバウトな記載になっています。

しかし、国民生活センターは寿命という言葉を使って欲しいと言っています。

これはメーカーと経産省も含めて、ユーザーに安全な情報を伝える義務をおろそかにしていると言えます。説明責任は果たしているが、伝える義務を果たしていません。

大事なことは、ユーザーが寿命について理解できない、あるいは理解していないということは、伝わっていないということです。

民法的に考えても、製品寿命による事故が発生しても、メーカーの免責にならない可能性があります。民法的な解釈では、経産省が提示する内容ではダメなんです。

ということは、今後メーカーが製品寿命に関して伝える義務を果たしていなかったことを争点とする訴訟が起こった場合、メーカーが責任を問われる可能性があるということですか?

その可能性が残るということです。昨年(2020年)民法も改正されました。

これは今年のTC協会のシンポジウムのオープニングイベントでお話したときの1枚です。

TC技術の活用で解決

民法的に考えると、中心にある「つたえる」という言葉には、目的を達成するという意味があります。ユーザーが目的を達することができないということは、ユーザーに伝えたことにはなりません。言い換えれば、ユーザーの安全が守られなければ、伝えたことにはならないのです。

はじめて20年以上使われた扇風機の事故が話題になったとき、すごく時間が経過してから経産省が安全表示制度などの通達を出しました。法律も改正され、ユーザーにきちんと伝えないといけませんよ、ということになったにも関わらず、同じ事故が起こってしまったのです。点検について書くとメーカーが点検体制を作らなくてはなりません。さらに、点検の結果寿命が来そうなら買い替えをユーザーに提案しなければなりません。メーカーはやりたがらないでしょうね。

46年前の製品には、標準使用期間のような説明は記載されていませんよね。

そうですね。新しい製品は事故が起きようもありませんが、何年も前の古い製品を使っているユーザーにそれを伝える必要がありますし、その義務もあるのではないですか?ということです。

また、新しい製品でさえ製品には寿命があります、とはユーザーに伝えていませんね。

今のような記載では、ユーザーは標準使用期間を超えると故障することもあるのかな?くらいの認識しか持たないですよね。でも製品には必ず寿命があります。その寿命は製品によって異なり、標準使用期間を超えるといつ寿命が来てもおかしくありませんので、点検するか買い替えてください。と伝えなければならないのです。

なるほど、そう記載すると標準使用期間と寿命の違いは理解できますね。

なのに、現状はどのメーカーも経産省の見本通りに記載しています。一字一句そのままです。

はっきり言うと、ユーザーに理解してもらおうという意図で記載しているのではなく、書かなければいけないから書いているだけです。法律で決められているからそのラベルを貼る、そのラベルの内容は経産省の見本通り。それ以上のことは書いていません。

本当にそれでいいの?というのが今回のテーマであり、問題提起です。

確かにその通りですね。この記載では寿命到達による事故を潜在させてしまうような気がします。 では何故メーカーはなぜ経産省の見本通りに記載するのでしょう? 製品には寿命があり、標準使用期間を超えたら買い替えてください、と記載する方が買い替え需要にもつながりますし、もっとスマートだと思いますが?

そういう意識はないですね。載せたくないのです。恐らく、寿命がくるという言葉を絶対に使いたくないのです。ネガティブなイメージを持たれたくないのですね。

これはもう前時代的な考え方だと思います。

どうしてでしょう? 物には寿命があるというのは普通の概念です。変な言い方ですが、寿命が来たら修理して延命させるか、新しいものに買い替えるか、そんなことは子供でもわかることですよね?

私が驚いたのは、結局ユーザーにはぜんぜん伝わっていなかった、ということなんです。まったく同じ事故が起こったのですから。むしろ製品の欠陥がまったくなかったから、46年も使い続けられたのでしょう。

では標準使用期間に到達したら、ユーザーはどういう行動をしたら良いのでしょう?

実際そう思いますよね。現状表示の欠点はまさにそれです。ユーザーにどういう行動をとってくださいということをまったく伝えていません。

確かに、そういう視点で経産省の見本を見ると、単なるインフォメーションですね。

国際規格でも、いわゆる警告メッセージに関しては何をどう記載すればよいのか決められています。これは単なる注意書きのようなものですが、やはりマークを付けたのなら、ユーザーにそれに対する行動を示唆していなければ不親切だと思います。

標準使用期間を超えると経年劣化により事故に至るおそれがあります、という注意書きに対して、ユーザーは何をどうすればよいのでしょう?

法律上これだけは書きなさいと指定されているけれども、ユーザーに提供するにはこれだけでは明らかに情報が不足しています。こういう場合はこうしてください、というところまで補わないといけないのではないでしょうか。

こちらのサイトでもいろいろと発信しています。良かったらご覧ください。

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ありがとうございました。

徳田直樹 プロフィール