パセイジはこうして在宅勤務を実現した⑥~コミュニケーション手段あれこれ
今でこそ電子メールは当たり前のように普及していますが、コロナ禍以前からメールによるコミュニケーションの弊害がまことしやかに語られるようになっていたと思います。TOであれCCであれ、何でもかんでもメールが飛んできて、受信トレイに届く膨大な数のメールをさばくことに一日の大半を費やすという経験をお持ちの方もおられるかと思います。
コロナ禍の影響下では、在宅勤務中の社員さんたちとのコミュニケーション手段としてチャットツールが取り上げられるようになりました。メール自体を否定するのではなく、メールでは足りないところを補完するためのツールとしてチャットの導入がイッキに進んだと思います。このコミュニケーション手段の両横綱であるメールとチャットを中心にアレコレお話ししたいと思います。
Gmail
弊社はダイヤルアップ接続が主流だった20数年前から「つなぎっぱなしの」インターネット通信環境を利用しており、当然メールもつなぎっぱなしで使っていました。
古典的なLinuxベースのホスティングサーバーでずっとメール環境を用意していました。先代のネットワーク管理者は自前でサーバー構築していたようですが、結局は労力・コストの面もあって、社外のホスティングサーバーに移していました。
2019年初旬、社内のメールシステムをGmailに切り替えました。Webサイト兼用だったホスティングサーバーは閉鎖せず残しているのでコスト的には割高になりましたが、IMAPベースのメールシステムなので利便性がかなり高くなりました(IMAPについての技術的な解説はここでは思いっきり割愛)。Gmailおそらく世界最強の迷惑メールフィルターを備えていますので、社員様のところに大なり小なり届く迷惑メールの量が飛躍的に減ったようです(ネットワーク管理者として初めて社員さんから感謝された!)。
もうひとつ、ネットワーク管理者の視点に過ぎませんが、前述のとおりIMAPですので、メールのデータがクラウド上に保管されています。2019年から2020年初頭にかけてWindows 7のサポート終了に伴い社内のPCをWindows 10搭載機にコツコツ入れ換えたのですが、データ移行の手間が以前に比べてぐっと軽減されました。あとは、社用携帯を所持している社員さん(主に営業)は複数のデバイスでメールを閲覧しますので、どの端末からでもデータの同期が取れているGmailのほうが便利だったようです。
Gmailはアプリケーションスイート(G Suite、今年の春からはGoogle Workspace)の一部として提供されているので、Gmailだけでなく他の「何かいろいろあって役に立ちそうな」ツールも濡れ手で粟のごとく使用できます。パセイジにおいて共有用途で利用されているのは、カレンダーとスプレッドシートくらいかな。どちらも日程や予定の情報共有のために使用しています。
チャット
チャットツール自体は、代表的なアプリであるSkypeの歴史が長いことからわかるように、かなり昔から存在しますが、メールに比べると普及率はずっと低かったと思われます。昨年のコロナ禍で急に導入した企業様が多いのではないでしょうか。
パセイジでもチャットが普及・定着したのは比較的最近です。現在では全社員参加でSlackを導入しています。もともとは2016年頃に一部の部門(つまりはネットワーク管理者のワタシが本業で所属する部署)で細々と利用を開始しました。いわゆるスモールスタートですね。一部の社員さんの間でSkypeの利用は進んでいたのですが、フリー版のSkypeはユーザー管理ができないので、社内で利用者をカッチリ管理できるチャットツールとしていくつか候補を選び、最終的にSlackに決めました。当時Slackは日本語版にはローカライズされていませんでしたし、今ほど流行していなかったと思います。
パセイジは職種ごとに部門が分かれていますので、ひとつの仕事に対し複数の部門が関わり合って作業を進めます。部門内だけでチャットツールを使っていても、それは部門内での共有でしかありません。次第に他の部門とも協同で使いたくなり、よそのグループにも利用をそそのかし……もとい、いっしょに利用するよう声をかけて少しずつ利用者の輪を広げましたが、いかんせんイッキに全員利用とはならないものです。仕事柄、ツールやアプリの代理店様と話をする機会がありますが、全社導入というのはどこの企業様も難しいと聞いています。
最終的に、先述のGmail移行のタイミングで、SlackにGmailのヘルプチャンネルを用意することにし、社員様に移行案内をするときにSlackも同時に参加するように手配し、これで全社員参加を果たしました。ということで、コロナショックが日本国中に充満する頃には、すでにチャット利用が進んでいたことになります。
Slackは、個人間のメッセージができるのは当然として、3人以上の利用者が何らかのテーマに基づき情報交換するための「チャンネル」という仕組みを備えるのが大きな特徴です。他のチャットツールが個人間(1対1)のコミュニケーションを大前提として設計されているのに対し、ビジネス向けに設計されているSlackは「チャンネル」という器を作成することで目的別・部署別・プロジェクト別にメンバー間の情報共有が可能で、誰でも自由に参加したり、逆にメンバーを限定することもできます。チャンネル設計次第で、整備された情報網を確立できます。調子に乗るとあまたのチャンネルが乱立するのですが……紆余曲折を経て、パセイジでは現在下記のようなチャンネルを運用しています。
複数名の関係者宛てに同報で連絡するときはメールが使われることが多いようですが、ちょっとした作業指示の伝達や連絡には、ずっと少ないエネルギーですばやくメッセージングできるチャットのほうが適しています。Slackに限らずチャットが普及していたおかげで、急に在宅勤務に切り替えても、作業性はそれまでと大きく変わらずに仕事を進められたようです。
社内はアカウントに満ち溢れている
そんなこんなで、メールでもチャットでもその他何でも、用途に応じてもっともよいツールを導入するというぜいたくなことになっています。おかげで社内はツールまみれだし、それがなくても何らかのシステムがいっぱいあるし、そのツールやシステムの数だけアカウントが発行されますので、社員さんはいくつもいくつもアカウントを管理しないとならないハメに……。
結果的に、社員さんにたくさんのパスワードを管理させるという負担を強いていますが、同時にネットワーク管理者もまたアカウントの管理が大量・煩雑化します。昔は、サーバーごとにユーザーアカウントを追加登録していた時代があったのですが、そこは自分の代になってからは統合を図り、アカウント名もメールアドレス作成時のものをエイリアスと称して他のアカウントでも同じ名義にするなどあれこれ整理・統合するようになりました。Active Directoryで管理できるものは極力そうするようにしていますが、すべてをActive Directory傘下にはできないし、パスワードもツールやシステムによって使用可能文字数の上限などの条件が異なりますので、どうしても社員さんご自身の管理任せになってしまいますので、カンペキに統合はできないものです。
それにしてもあまりにもアカウントが多いので、新たに入社する社員さん用には1枚資料を用意するようになりました。こうでもしないと自分も社員さんたちもアカウント情報の管理がしづらいだろうなぁと。
さて、コミュニケーション手段としてのツールにはあともうひとつ、Web 会議ツールがあります。これについては次回お話ししたいと思います。今回はここまでにしとうございます。