[とくダネ!ナオキ 第2話]安規情報はもっと整理できる Vol.2
前回の続きですが、その最後にキーワードとして挙げられましたリスクアセスメントについて詳しく教えてください。まずは安規情報を整理していくために、リスクアセスメントはどのように関連していくのでしょうか?。
リスクアセスメントをきちんと実施できているかどうか、マニュアルを書く人たちがその情報を得ることができているのか、ということが重要なポイントになります。 言い換えれば、情報を得ることができていないケースの方が多いという実情があります。
それはどうしてですか?
今までリスクアセスメントの文書やその結果など、制作段階で出してもらったことがありますか?
そういえばありませんね。
マニュアルの担当部門や担当者から提供されるのは、ベースマニュアルなどの過去の情報だけでしょう?
はい、往々にしてそうだと思います。過去のマニュアルか、類似製品のマニュアルの安規情報を指示されたり、支給されたりすることが多いですね。
そうですよね。そういうケースが多いと思いますが、実際は新しい製品が出るたびにリスクアセスメントが行われて文書として記録されているはずです。きちんとリスクマネジメントやクオリティコントロールを実施していれば、そういう文書やデータが必ず存在するはずです。
ところが、あるはずの文書がマニュアル部門まで回ってきません。リスクアセスメントには、このことを必ずマニュアルに書く、という書き方になっているはずです。
リスクアセスメント文書には実際には何か記載されているのですか?
リスクアセスメントは、安全設計のために、ここに危険性がある、それを解消するためにこういう対策をする、あるいはこういう手立てを取る、というようなことが記録されます。その中で、製品のラベルをこのようにするとか、最後の手段としてマニュアルにはこのように記載する、などが普通は記載されています。
リスクアセスメント文書は過去どのくらい提供されたことがありますか?
ほぼないですね。クレステックの国際規格情報室では見ているけれども、パセイジではほぼないね。(笑)
そもそも、安規情報と言うのはライターが想像で書くことではないですからね。
当然のことです。マニュアルを書く人間が想像で書いちゃいけないものです。まずはユーザーの安全、その製品がどの程度安全であるか、ということは設計段階で当然分かっているわけですよね。そうすると、マニュアルで何を説明するか、ということはその段階で決まるんです。
考えてみれば当たり前のことですよね。
なぜ、マニュアル部門にその文書が回ってこないか、ということが問題なんです。
なぜでしょう? もちろん機密文書であることは間違いないですが、マニュアル制作フローの一環として降りてこなければならないのではないですか?
リスクアセスメント文書はエビデンスとしても保管しておかなければならない文書で、何か要求があった時に公開しなければならない文書でもあります。
万一賠償請求のような事態が発生した際に、きちんと安全設計がなされたかどうか、という証拠になるということですね。
そうです。ですから、リスクマネジメントを見れば、製品の欠陥なのか、ユーザーが間違った使い方をしたのかが判るということです。
世界のレベルで言えば、EUのCEマーキングを付けるためには、その文書は当然必要です。それをEUの出先機関が常に保管していて、その機関から要求があれば即座に開示する必要があります。リスクアセスメントとはそういう文書です。
そういう意味では、メーカーには必ず存在する文書ということですね。そうすると、さらに疑問が湧いてきました。なぜマニュアル部門にリスクアセスメント文書が渡らないのか、ということに関して、意図的にマニュアル部門に降ろさないのか、担当部門間の疎通が図れていないのか、あるいは要求をもしていないのか、どうしてなのでしょう?
おそらく要求していないのだと思います。
では、要求したら出てくるものなのでしょうか? 次回はその辺りの実情についてお聞かせください。
徳田直樹 プロフィール