
マルチモニター談義
コロナ禍によって在宅勤務とかテレワークが世間で急激に普及した頃から、ひとつの PC に 2 台またはそれ以上のモニター (液晶ディスプレイ) を接続して使うという流儀がかなり速いペースで流行したと思います。
モニターには昔からふたつ以上の接続端子を備えているものが多く、マルチモニター自体はさして新しい技術ではありません。旧式のアナログ D-Sub 端子ひとつだけしか持たない実に潔い?モニターもありましたが、規格や形状は異なっていても、接続端子がふたつかそれ以上あるのが普通です。同様に、それを接続する PC も、頼みもしないのにふたつくらい接続端子を持っているものが多いですから、マルチモニター自体は実現する環境は昔から存在していたという気がします。
実際にマルチモニターがもてはやされるようになったのは、テレワークも在宅勤務もたいそう普及したあたりからで、あちこちでモニターふたつ使いを猛烈にリコメンドする人が増えたからでしょうか。世に言う SNS でその利便性を語る人が続出していましたし、それこそ YouTube という一種の公共電波に近い媒体において、私生活を切り売りする自称他称ユーチューバー諸氏が自前でゲットしたモニターのレビューを公開して何かにつけてコスパコスパと連呼していたものです。
弊社パセイジもマニュアルのコンテンツを作るのを生業にしている企業ですから、そのコンテンツ制作とかニュアルのデータ作成において、メインとなるモニターに加えてふたつめのモニターを足すことで、広大なデスクトップ環境を確保して作業性を高める……というスタイルが定着しています。マルチモニター自体はありきたりの話題ですが、弊社の事情でそのあたりについて語ってみたいと思います。
マルチモニター、そのメリットを考察すると
かくいうワタシ自身は、だいぶ昔からデスクトップ PC とは別にサイドアームとしてノート PC を使っていましたので、2 台持ちによる 2 つのモニター環境には慣れ親しんではいました。ただし、世に言うマルチモニターというのはそれとは本質的に異なり、ひとつの PC に 2 つ以上のモニターを接続することでモニター 2 台分のデスクトップ描画領域を使うことを意味していますから、ちょっと違うのですけどね。
ひょんなことから、サイドアームのノート PC にデスクトップ PC 用のモニターを接続した環境で作業をしてみたのですが、そこで改めてそのメリットを実感したのでした。つまりコンソール (入力装置、ここでは事実上キーボードとマウスのこと) がひとつでよいというコレに尽きるのだな、というのが結論です。切り替えるのはアタマというか意識だけ、コレがめっぽうラクなのでした。それに対して、手元のコンソールをいちいち切り替えて操作するのは何気にココロの負担が大きいと気づきました。

実際には、サイドアームのノート PC にふたつめのモニターを接続し、そのセカンドモニターには別の場所にあるデスクトップ PC にリモートデスクトップ接続したその内容を表示していますから、結局は 2 台の異なる PC を操作していることになります。ノート PC とデスクトップ PC を同時に操作するのと結局は同じなのですが、ノート PC をコンソールにしてマルチモニターで操作したほうが断然ラクです。実際に試してみるまでは実感は湧かなかったのですが、世間一般でやたらもてはやされる理由はこういうことかぁ。
もっとも、デスクトップ PC とノート PC の 2 台持ちという環境を社員全員が持っているわけではなく、ココまではワタシだけの特殊事情。多くの社員が基本的にデスクトップ PC のみでシゴトに邁進しています。以降、弊社パセイジでの導入事例について、ワタシ自身の偏った経験に基づく接続パターンも含めて披露したいと思います。
フツーにモニター 2 台というケース
前述のとおり、モニターも PC も、映像送受信用の接続端子はほっといてもふたつくらい備えています。昨今ではモニターも PC も判で押したように HDMI/DisplayPort が標準装備ですから、適合するケーブルさえあれば、PC のふたつの接続端子にそれぞれモニターを接続すればマルチモニターのできあがりです。

PC はさておき、モニターもその「昨今の」ものだけなら話はカンタンですが、実際には火の車のような弊社の台所事情もあって、おニューのモニター 2 台を社員ひとりひとりに支給するなんてのは夢物語もいいところで、原則はひとりにつきモニター 1 台。そこから「ワタシ、マルチモニターで作業効率アップしたい!」と思い立ち、余剰モニターを確保することになります。たいていの場合は社員さんからワタシが「モニター余ってない?」と聞かれますので、何らかの事情で放出されるたびに余剰モニターを確保して保管したりしてはいますが、新しめで条件がよいモニターはすぐに払拭してしまいます。あと、たまにワタシの管理の目をすり抜けてどこかで勝手に持ち去られることもあったりするような……ええ、古来より我が社にはハイエナがいっぱいいますから。
ともあれ、余剰モニターをセカンドモニターとしてお渡しするわけですが、たいていの余剰モニターは 10 年選手かそれ以上前から存在する年季の入ったシロモノばかりです。今では珍しくなったスクエアタイプ (昔のテレビと同じ縦横比 4:3) ですし、接続端子も青 (アナログ D-Sub) か白 (DVI) だけだったりします。

画面のアスペクト比はセカンドモニター用途なら許容できますし、モニターのフットプリントも比較的小さいので机の上の設置スペースも小さくて済みます。ただ、接続端子によっては PC にそのまま接続できず、変換アダプターとか変換ケーブルを使ってモニターに接続しないといけません。それがモニターと PC の搭載端子ごとに判断しないといけませんので、セカンドモニターを据え付けるたびに PC の背面とかモニターの背後をのぞき込み、そこから今度は適合するケーブルを探し求めて社内のガラクタ箱を漁るというイベントが待ち受けています。
あと、昔の D-Sub とか DVI は端子の両脇の 2 本のネジで固定するのですが、アレって締めるときも緩めるときもやたら指が疲れるんですよね。指先しか動かしていないのに大汗かくから不思議なものです。
ともかく、パセイジ社内で圧倒的に多いのは「年季モノのスクエア型モニターをセカンドモニターにする」です。そして、あまりにも古いせいか、毎年 1 台か 2 台くらいはそのスクエア型モニターがお亡くなりになります。幸か不幸かそのスクエア型モニターはある時期に大量導入したので (おそらく大昔に期末の予算消化で景気よく買った)、速攻でさらに余剰の代替機に交換して現在に至ります。ああ、でも、そろそろ余剰が枯渇していたかな……。
壁越しにも机の上でも Miracast
ところで、PC の映像をモニターに映し出すにあたり、HDMI とか DisplayPort のような有線ケーブル接続ではなく、Wi-Fi 越しに無線で接続するという規格「Miracast」というものがあります。
パセイジ東京本社の社内には壁掛けテレビが設置されており、テレビには HDMI だけでなく Wi-Fi 機能も備わっていましたので、Miracast でケーブルレスで外部モニターとしての利用が可能でした。壁のそばのお立ちテーブル (立った状態で使うのを意図した丈が高い打ち合わせテーブル) に社員がワラワラ集合し、誰かがテーブルの上でノート PC を操作して、壁のテレビに Miracast で映像を映してみんなで眺めるという利用のしかたをしていました。

さてこの Miracast。Wi-Fi ベースで接続しているわけですから、壁とかテレビに限定したものではなく、余剰ノート PC でもセカンドモニターにできるわけです。そこで、ノート PC を自宅に持ち帰って自宅作業をしているときに、家にあった余剰ノート PC を Miracast で外部モニター化してみたのでした。
それで、Miracast による接続自体はできたのですが、余剰ノート PC が「10 インチ程度の液晶のくせに解像度が 2K クラス (フル HD よりも解像度が高い)」だったせいでドットピッチが小さすぎて目潰しモニター化してしまったのと、何よりもその外部モニターにしたノート PC で映像に残像感というかブロックノイズというか波ノイズが出てしまいました。自宅の Wi-Fi 環境が貧弱なのか、ノート PC 同志の無線接続自体に無理があるのか? 結局、いっぺん接続して技術的好奇心を満たしたところで以降はいっさい使わなくなりました。

USB Type-C オンリーのモバイルモニター
そんなこんなでしかも世間ではテレワークの必需品と言わんばかりにあまたのモニターが紹介され、テレワーク需要を狙いすましたかのように新製品も続々登場。その中には、机の上に据え置きで使うモニターだけでなく、ノート PC といっしょに持ち運んでどこでもマルチモニターの実現を意図したモバイルモニターが定番商品として登場しました。モバイルモニターは USB Type-C 接続で、PC から給電するタイプ (電源不要) というのが主流で、ケーブル 1 本で動かせるのが実に魅力的でしたが、当時自分が使っていたノート PC は Type-C 端子を搭載していなかったのでそんな先端のモニターは無縁と思われました。
ところが、いろいろ調べているうちに「USB Type-C による映像出力は DisplayPort Alternate Mode であり、つまり実態は DisplayPort」ということを知りました。モニター側が Type-C 端子のみで、ノート PC に Type-C 端子がなくても、HDMI からら DisplayPort に変換してしまえば、お次はその DisplayPort を Type-C に変換してしまえばよいわけです。当時の愛機のノート PC は HDMI のほかに miniDP を搭載していましたからもっと話は早くて、mini-DP - Type-C 変換さえ用意すれば Type-C オンリーのモバイルモニターを接続可能……ここまで考えたあたりで世に言う「気絶」状態になり、次に意識が戻ったときにはモバイルモニターを購入していました。

USB Type-C (の DisplayPort Alternate Mode) なら PC から給電もしてくれるのでモニターを電源に接続しなくて済むのですが、このワタシのケースでは映像のみを DisplayPort 接続で送信しているだけなので、モニターには別に Type-C ケーブル経由で電源に接続しないといけませんでした。が、今ドキのモニターが使えているので、よいのですよ。ハイ。
夢のトリプルモニター
先述のとおり、その愛機のノート PC には HDMI 端子もありましたから、miniDP 越しにモバイルモニターを接続するのと同時に、HDMI 端子にも外付けモニターを接続すれば、トリプルモニターが実現できます。どこかの証券トレーダーなんかがやっていそうなかんじで 6 つくらいモニターを壁面に並べるのは無理としても、マックス 3 台は実現できそうです。なのでやってみました。

当たり前と言えば当たり前ですが、ただ接続するだけで、Windows 側でも 2 台の外部モニターを認識し、配置に関する設定も普通にできました。何事も経験です。とはいえ、毎回 3 台も接続するのは面倒というか、ノート PC も含め 3 つのパネルを並べる状態の最適解を考えるのが面倒になり、2 台までのデュアルモニターで満足することにしました。
で、ここまではよかったのですが……。
デュアルでシングル
あるとき、その愛機ノート PC のモニターが映らなくなりました。外付けモニターには普通に映っていましたから、液晶パネルの故障です。後日、修理に出して判明しましたが、液晶パネル側のインバーター不良だったようです。いずれにしても映らないだけで、PC 自体は生きてはいました。
それでどうしたかというと、くだんのモバイルモニターをノート PC の液晶パネルの上に重ねて使っていました。モニター自体はマルチというかデュアルですが実質シングルモニター、です。

パネルも倍、重量もおよそ倍。電源だって PC とモニターのそれぞれ用にふたつ必要で、それぞれにケーブルをつなぎますから、見た感じなかなかのスパゲッティ状態です。そんなモビリティを著しく損なってしまった愛用のサイドアームを、せっせと社内で持ち歩いて使っていました。
その後、当時の愛機だったノート PC を手放して新しいノート PC に入れ換えたのですが、その新調したノート PC は今ドキ仕様で Type-C 端子を搭載していましたので、変換ケーブルかまさず直に Type-C ケーブルでモバイルモニターに接続しています (もちろん別の電源供給用ケーブルも不要)。古いモノを知恵を尽くして使い続けるのも大事ですが、新しいのを調達したほうが圧倒的にラクなんだよなあ。
# 快適な環境も結局はカネ次第マルチモニターの接続パターンについていろいろ語りましたが、改めて振り返ると、限られたリソースでのやり繰りの積み重ねの成れの果てもいいところで、経済的に余裕があれば最初から必要なモニターを必要な台数買うなど、カネさえあれば誰も苦労はしない……みたいな話になったような気がしてなりません。
いえ、まあ、おカネってのは限られていますから、手元に利益を少しでも残したいのなら知恵を絞るしかないのですよ……工夫次第で何とかなるという経験を積んでおけば将来いろいろと応用が利いて、世知辛い世の中を生き抜いていけるかもしれません。
と無理のある見解で自分をなだめすかして、今回はここまでにしとうございます。というか、だいぶワタシの私的経験談が混入しており、つまらないモノを読ませてしまってスミマセン……。