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パセイジ通信

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[とくダネ!ナオキ 第72話]これ読めますか?

通勤電車の中で気になるポスターを見つけました。これです。

東京グレートベアーズのポスター

東京グレートベアーズというプロバレーボールチームのポスターです。何気なく読み進めて、最後の行で止まりました。読めないのです。拡大したものが次です。

東京グレートベアーズのロゴとキャッチフレーズ

皆さんはこれ読めますか?私には、真ん中の単語はかろうじて”TO”ではないかと想像できるのですが、最初と最後の単語が最初は読めませんでした。これを一生懸命読もうとする私は「もの好き」なのでしょうね。

確かにユニバーサルではないですね。普通のヒトでも判読に苦労するでしょう。

ガンバって読めたと思うまでに2駅や3駅は通過したと思います。

私は読む気にもならないですね。

読み取った結果は

STRENGTH TO HUMANITY

です。私はこのフォントを初めて見ました。名称は知りません。このフォントはデザイナーの好みなのかもしれません。しかし、こんなに読みにくいフォントをガタガタ揺れる電車内に貼るポスターに使うことは、テクニカルコミュニケーターとしては受け入れられません。

テクニカルコミュニケーターでなくとも受け入れならないと思いますよ。

このバレーボールチームのホームページを調べました。そこにはポスター内のすべての要素が説明されています。

出た!格好の餌食ですね(笑)

背景のピンクはチームカラーです。“2024”より上の部分はチームのロゴです。オリジナルフォントを使っていますが読みやすいです。”Volleyball Dream”はクラブコンセプトだそうです。そして、クラブ理念が「人に強さを(STRENGTH TO HUMANITY)」なのだと書かれています。

ホームページの”STRENGTH TO HUMANITY”のフォントは次のとおりです。

人に強さを(STRENGTH TO HUMANITY)

読みやすいノーマルなゴシックです。

このフォントはAPTOSだと思いますが私はデザイナーではないので正確には判定できません。しかしこれを読むのに、何の困難も感じません。なぜ車内ポスターに読みにくいフォントを使ったのでしょう。デザイナーの意図が私には理解できません。

何かしらの意図があるならと思いますが、見当もつきませんね。

次はインターネットで見つけた読めないPOPの写真です。

生筋子の字が書き間違えられた貼り出し

町の鮮魚店ですかね?

2番目の字は辞書には載っていない漢字です。「節」を書き間違えたようにも見えます。

しかし、「生節」(なまりぶし)と読んだとしても3文字目に「子」がつくと意味が通らなくなります。
なまりぶしはタケノコと炊き合わせるとおいしいですが、タケノコを匂わせる表現は書かれていません。「節」と読むのは間違いのようです。

実は、この写真には正しい(?)読み方のヒントが写っています。写真の右端を見てください。わかりにくいですが「いくら」が写っています。「いくら」は筋子から作ります。ということは、このPOPは「生筋子」と書くつもりが写真のように書いてしまったということなのでしょう。文字だけでは判断しきれない例でした。

気が付きませんでしたが確かにそうですね。これは、ま、ご愛敬でしょう。

次は、読みにくい理由がフォントではなくインクだという話です。

バスの窓に次のような注意が貼られていました。

生筋子の字を間違えた貼り出し

褪せてますね。

特に赤色が褪せて非常に読みづらくなっています。

この色褪せた表示はテクニカルコミュニケーターに対する警告とも考えられます。赤は紫外線などで退色しやすいのです。その理由に関する御託を並べてみます。

赤のインクを構成する化合物は赤だけを反射し、他の色は吸収します。それで人の目には反射光だけが届くので赤く見えるのです。光の持つエネルギーは波長が短いほど高いのです。赤インクは橙より短い紫外線までの光のすべてのエネルギーを吸収するわけです。
他の色のインクに比べて赤インクが一番多くのエネルギーを吸収するわけです。一般の赤インクを構成する化合物は吸収したエネルギーが高いと分解しやすいものが多いのです。これにより他の色より分解されるのが早いので他の色の光を吸収できなくなり、多くの色を反射するため白っぽく見えるのです。これが色褪せるということです。

耐候性と色の波長ですね。学校よりこの業界に入ってから覚えました。(笑)

それゆえ警告ラベルなどに赤を使うときは何らかの予防措置をとる必要があります。考えられる予防措置には次のようなものがあります。

・ラベルにUVラミネート加工をするかUVニス加工をする

・対光性インクを使う

どちらもコストは増加しますが考慮しておいて損はありません。赤を使うときは退色の可能性に注意する必要があります。

最後はデパートの冷凍ロッカーのドアに貼ってあった、使い方を説明した貼紙です。

バスの窓に貼られた注意書

褪せるどころか読めませんね。

おそらく担当者が貼りっぱなしで、確認しに来たことがないのでしょう。

ここは地下の食品売り場の近くです、光は天井の照明からのみです。あまり強い光ではありません。
さらにほかのドアに貼られたものはここまで退色していませんでした。原因は糊に含まれた成分による退色かもしれませんが、私には原因を特定できません。ここまで退色したものは張り替えてくださいと言うしかありません。

ラベルやマニュアルも使用状況を鑑みて素材を選択するのは当たり前ですからね。
ありがとうございました。

徳田直樹 プロフィール