[とくダネ!ナオキ 第28話]正しく伝えるつもりあるのかな?
今回は電車の安全標識ではなく気になる広告があったとか?
電車で次のような中づり広告を見つけました。
脱毛の美容広告ですね。今は男性でも髭の永久脱毛とかが流行っているようです。
これは何を読者に伝えようとしているのだろうか? というのが今回のネタです。
恐らく、毛根の深さごとに4つの波長を使えるから効果的だ、と訴求しているように見えます。
まず見出しの「4波長」が何の波長なのか分かりません。イラストを見ると毛の長さと波長を表す矢印の長さがほぼ同じです。毛根部分だからミリ単位でしょう。
ミリ単位の波長を使う無線装置でしょうが、1 mmの波長の周波数は300 GHzです。現時点でその周波数帯の無線装置は実用化実験の段階です。医療目的で使われるはずがありません。しかし、イラストをよく見ると700 nm、755 nm、810 nm、1044 nmという波長が表示されています。
この波長の領域は、赤色光から近赤外領域の光の領域です。どうやらレーザー光を使った脱毛の広告だという結論にようやくたどり着きました。
私も美容脱毛なんてしたことはありませんが、レーザーを照射して毛根を潰すのだろう、くらいは何となく知ってますよ。(笑)
美容脱毛に興味のある人や、比較的若い人たちにはレーザーを脱毛に使うことは周知のことなのかも知れませんが、この広告にはレーザーを使用するとは一言も書かれていません。私のような年配者もレーザー脱毛の広告だということが伝わらないのではないだろうかと思います。
トリセツの専門家としてはツッコミどころ満載だと感じます。
もしかして徳田さんがこの広告のターゲットから外れているのではないですか?(笑)
でも、波長をうたいながら、何の波長かを記載していないのは明らかに説明不足だと思います。
この広告のイラストと説明からは、毛根の深さによって波長を使い分けているかのように思われます。しかし、毛根の深さを治療中に順次判断できるとは思えませんし、レーザーの波長を毛根の深さや大きさに応じて自動的に変えるなどは不可能でしょう。そういう意味で、この広告は何を言いたいのか見当つきません。
確かに「4波長=効果的」だとうたっていますが、具体的にどのように効果的なのか、ということを受け取ることはできませんね。ま、イメージ広告なのかも知れません。
調べないと気が済まないたちなので、レーザー脱毛について調べてみました。
レーザー脱毛については、山手皮フ科クリニックが詳しい情報をWebサイトに掲載していました。
https://www.yamate-clinic.com/iryou_datumou/machine.html
ここではそのイラストと内容の一部を引用させていただくとします。
レーザー脱毛というのはレーザー光を皮膚に当てて、毛のメラニンを高温にし、下図のバルジと毛球部を熱破壊する脱毛法だということです。
脱毛に使われるレーザーは、単発照射式と蓄熱式の2種類があるようです。
単発照射式は波長が755 nm(アレキサンドライトレーザー)のものが一般的で、波長1064 nm( Nd: YAGレーザー )のものも使われています。毛1本ごとにレーザー光を照射するが、照射時間が短く一瞬で毛を燃焼させ、その熱で毛根を熱破壊する、と説明されています。
蓄熱式はダイオードレーザーを使った波長810 nm + 940 nmの製品が使われています。相対的に長い時間皮膚のある程度広い範囲に照射し、同時に範囲内全部の毛に熱を蓄積して多数の毛根を同時に熱破壊するそうです。
考え方によっては、蓄熱式は2波長で効率的だと言えるでしょう。
詳しくは判りませんが、このクリニックの場合単発照射式の1波長、および蓄熱式2波長の処置方法があるということですね?
レーザー光の波長が短いほどメラニンへの熱吸収度が高く効率的だけれども、到達深度が浅くなる。したがって、単発照射式を使う場合、通常はアレキサンドライトレーザーを使い、毛根が深い人には波長の長いNd: YAGレーザーを使うという使い分けが行われているようです。
中づり広告の波長が描かれた矢印は到達深度を表していたのですが、このイラストは到達深度を比較するためだけに使われるべきで、効率を比較するのに使うべきではありません。
波長の使い分けと、単発照射式と蓄熱式の使い分けという異なるカテゴリーのことを、中づり広告はゴッチャにしているのです。方式の異なるものが含まれる4波長ですら、比較することに意味はないと思います。
ひとの毛根深度と照射波長を自動調整できるのかどうかというのは既に述べましたし、4波長あるから効率的だとは言えません。理論的ではないのです。
恐らく製作者の無理解によるもので、意図的ではないのかも知れませんが、読者を誤誘導しかねない広告だということになります。
トリセツはPL法でその欠陥が問われますが、広告の場合は景品表示法などでその違反性を問われることがあります。いずれにしても、情報は正しく伝えなければいけません。
ありがとうございました。