[とくダネ!ナオキ 第14話]異常事態におけるマニュアルの役割
今回は自然災害などの異常事態という観点から、マニュアルの役割についてお聞きします。
マニュアルで扱う異常というのは、製品が異常になったということだけを考えがちです。つまり製品自体が故障したということです。しかし、電気製品では長時間停電になるような使用環境の異常も起こりえるわけです。
昨年も台風や集中豪雨による停電などは各地でありましたね。
送電線や送電設備に損壊が出て、1か月近くも停電する事態がありました。長期停電などは、今や珍しいことではなくなってきています。
そういう異常事態が起こった場合に、製品がどうなるのか、復旧して使い始めるときにどうしたら良いのかなどが、書いていないマニュアルが多くあります。
だんだん災害の規模も大きくなり、先日の足利市の山火事でも、数日間避難することを余儀なくされた住民も大勢いました。
そういうときの対応の仕方を、特に電気製品はマニュアルに書かないといけません。
停電や断水、いわゆるライフラインが遮断された場合の対処ですね。
イメージしやすい製品で、たとえば最近のトイレです。自動洗浄や自動開閉、おしり洗浄などは日本ではもはや当たり前です。このような製品の場合、停電しているけど水道には異常がないという事態の対処を、きちんと書かなければいけません。そういうときに、トイレをどう使うのか、何が使えないのか、どうすれば使えるのか、などの情報がユーザーに必要です。
大手メーカーではWebサイトで説明していますが、今後はそのような長期の異常事態や想定し得る事態に対して、どのような対応が必要になるのか、という情報を積極的に出していかなければいけません。
当然環境への配慮も必要です。こんなに何度も何度も災害が発生しているのですから。
その異常事態への対処も、規格で要求されていますか?
はい、要求されています。これからは製品の内部要因としての異常だけではなく、自然災害などあらゆる外部要因からの異常もあるという認識を持つ必要があります。
停電した場合、スマホやノートPCなどはバッテリー駆動できますがもちろん制限があります。Wi-Fiは使えないでしょうし、ワイヤレスWANの基地局や中継器もダウンする可能性があります。異常時には、そもそも電子メディアが使いにくくなるということも考慮に入れなければなりません。
なるほど。イメージしやすい製品をもう一つ挙げてください。
冷蔵庫もそうですね。
冷蔵・冷凍庫は対処しようがないのではないですか?
対処しようがないというより、長期停電に陥ったときや、電気が復帰したときに、どういう対処が必要なるかということです。
長期停電という事態では、中のものを出して電源プラグを抜いておくことが必要です。カビが繁殖しないようにお手入れしておくことも必要でしょう。それで電気が復帰したときに、あらためて電源プラグを挿して運転を開始する、ということになります。
長期停電中にプラグを挿しっぱなしにしておくというのは、恐らく良くないと思います。
と言うのは、復旧直後は電圧が安定しているかどうかわからない中で、それが製品へのダメージにならないかということも考慮しなければいけません。復旧後また停電するということも珍しくありません。
製品にそれに対処する機構が備わっていれば別ですが、その可能性がある以上リスクアセスメントの俎上に挙げないといけませんよ、という話です。
残留リスクとしてですね?
そういうことです。
つまり電気製品のリスクアセスメントにおいて、長期の停電というものに対して、どういう振る舞いをするか、ということになります。
またマニュアルに問われる役割が増えますね。
マニュアルとは元来そういうものです。
実は昨年の大規模長期停電において、メーカーにさまざまな情報が入っています。メーカー名は出せませんが、Webなども活用してうまく対応したメーカーとそうでないメーカーがありました。
ただし、先ほども述べたように停電時は電子メディアが使えなくなる可能性がありますから、やはりマニュアルに記載しておいた方が良かったという結果も出ています。
今後メーカーはさまざまな情報を入れてくるでしょう。
ありがとうございました。