[とくダネ!ナオキ 第103話]誰に読んでほしいのか?
通勤途中の地下鉄の駅で次のような看板を見かけました。

右下に会社名が書かれているのですが、それは消してあります。
さて、読者の皆さんはこれを見てすぐに何を伝えようとしているのかわかりますか?私は理系出身なので、これが階乗の計算式であることはわかります。しかし、5×4×3×2×1+4×3×2×1+3×2×1の計算結果なんてメモ用紙がなければ導き出せません。結局、この会社のホームページを見て150周年を迎えたことを確認しました。
この看板を目にする大部分の人は階乗を習っていないでしょう。私は、高校生の時に数2Bで習ったと記憶しています。現在の高校教育では数Aで習うそうです。いずれにせよ選択科目なので選択しない限り習うことはないわけです。Yahoo!知恵袋などを見ると習っても記憶に残っていない人がかなりいるようです。つまり、大部分の人は階乗の式なんて解けないのです。
この看板は駅を利用するさまざまな人が目にします。その中で「150周年」がすぐわかる人はほんのわずかです。この看板を掲示するにはそれなりに費用が掛かったと思います。目を引く表現だとは思います。でも費用対効果は決して高いとは思えません。それだけの経費を使って誰に会社設立150周年を伝えたかったのでしょう。下部のキャッチコピーもポジティブではあるけど抽象的で階乗の数式との関係性がつかみきれません。
テクニカルコミュニケーターの視点で言わせてもらえば、看板掲示を計画した時に対象者を考慮したとは思えません。奇をてらって目立つことを優先したのではないかと考えてしまいます。使用情報の国際規格IEC/IEEE 82079-1:2019には「使用情報の計画では、対象者に要求される知識及び作業を考慮しなければならない」と明記されています。テクニカルコミュニケーターは使用情報の計画時に対象者を考慮します。この看板は使用情報ではありませんが、情報発信の計画時に対象者を考慮することの必要性は当てはまります。不特定多数に向けて情報を発信する際は、計画時に対象者に要求される知識を定義し、それを基に伝えるべき内容の表現を考えることが望ましいのです。