勢いで IT パスポート受験
先日、情報処理推進機構 (IPA) 主催の IT パスポート試験を受験してきました。天下の国家試験です。その経緯と結果をココに披露します。
受験者 (つまりワタシ) の素性
- 昔から試験に弱い。からきし弱い。
- 試験とか受験なんてのは大学受験が最後で、社会人になってから一度も受けていない。
- 技術的なことは何の知識もなくすべて代理店 SIer 任せのなんちゃって「ネットワーク管理者」。
- 社内無料サポセンとか各種機器の面倒は見ているが専任ではない、しがない「兼業情シス」。
- ネットワークとかシステムみたいな「自分たちが理解できない」IT の話になると速攻でその対応を放り出すコンサバ総務の代わりにその負担をする「裏総務」。
……つまり何もかも中途半端のヘタレ。
ことの発端
去年の夏頃に書店で参考書を手に取り、折を見て受験しようとボンヤリ決意。これがそもそもの第一歩だが、本格的に受験対策を始めたのは 10 月頃。
受験対策とその経緯
新書サイズの演習問題集を毎日の通勤電車の中で通読。
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演習問題集の再読をするも、途中で投げ出し別の資料をあたることにする。無駄な回り道。
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通勤電車の中でスマホ越しに最新のシラバスに目を通す。眺めるだけでさして記憶に残らない。
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YouTube にやたらたくさんある解説動画のうち、最新用語に関する動画を寝床で聞く。寝落ちするので途中の用語までしかアタマに入らない。
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方針を変え、通勤電車内でスマホで解説動画を流し、ヘッドセット越しに音声だけ耳で聞く。モチロン倍速再生。
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そうこうしているうちに、過去問挑戦も受験申し込みもしないまま年の暮れ。年末年始の休み中に、重要な用語の解説に絞った内容の、比較的薄い参考書を通読。
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参考書の解説を読んでいて、よくわからない言葉の解説を生成 AI に尋ねる。生成 AI 大流行の今どきの検証方法と言えば聞こえはよいが、盛大な脱線に陥って時間を浪費するという副作用。話が長くなりすぎて 生成 AI の最良プランの制限にひっかかったら別の生成 AI に切り替え、結果として 3 つの生成 AI をカプセル怪獣 (← ネタが古い) みたいに使いまわす。
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IPA のサイトからダウンロードできる過去問のうちもっとも古い 平成 21 年の過去問を解く。この当時は紙ベースの答案用紙で、昔ながらにプリントアウトして手書きで解答を記入。正答数は ストラテジ系 22、マネジメント系 15、テクノロジ系 31、中問 A が 2、中問 B が 3、中問 C が 4、合計 77/100。
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過去問で誤答したものはこれまた生成 AI 相手にひたすら壁打ち。生成 AI はすっかり脱線誘発装置。
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直近の過去 3 年分の過去問を解くという方針に絞り込み、手始めに令和 5 年の過去問を解く。ここで初めて CBT 形式の過去問。正答数は ストラテジ系 25、マネジメント系 17、テクノロジ系 33、合計 75/100。前より点数落ちてんじゃねーか!
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ふたつの過去問の結果を生成 AI に伝えて見解を聞く。「過去問に 15 年の開きがあり、その間にシラバスも出題形式も出題方針も激変しているのに、結果がほぼ同等の正答率で、しかも合格ラインの 60% を優に超えている……もう勉強はいいからさっさと受験しなさい」と言われる。
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1 月も半ば過ぎた土曜日に急に意を決して受験申し込み。クレジットカード決済なら「前日の正午までに申し込めば翌日受験可能」だがいくらなんでも早すぎるということで翌週水曜日に受験すると決めて申し込みフォームで処理を続け、決済のところでセッションエラー。何度試しても同じでココロが萎え、申し込みの手が止まる。
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夜になり、受験申し込みのセッションエラーの対処方法をググって探り、再度申し込みに挑む。何を血迷ったか、翌水曜日から前倒して翌月曜日の受験日にするという暴挙に及ぶ。対策のために残されたわずかな 1 日だった日曜日はさして勉強もせず、さっさと寝る。
受験日当日
朝。最後の悪あがきで、寝モバ用スマホで暗号化の鍵の種類 (共通・公開・秘密) の解説動画を閲覧。自主研究用にあつらえた Ubuntu Server マシン (GUI 操作がいっさいできないサーバー OS 搭載機) をターミナル操作するために手元で作成した鍵ファイルがなぜふたつあったかを初めてマトモに理解したところで家を出て試験会場に向かう。朝イチの試験時間にしたのでこの日はカイシャを午前半休。これは仕事か、それとも私事か?
試験会場到着。受付を済ませ、荷物と持ち込み禁止品をロッカーに放り込み、直前の申し込みだったのに座席番号がなぜ「1」なのか軽く首をかしげながら着席。目の前の CBT 端末のモニターとマウスが同一メーカー製なのにキーボードだけ別メーカー製なんだなと極めてどうでもいいことを思いながら、画面の表示倍率をちょこっとだけ大きくし、メモ用紙の紙面を四分割する線を書き出して、試験開始をボンヤリ待つ。
試験開始。1 問めから 100 問めまで 1 話完結の均一な粒度の設問だとわかりきっているのに、100 問めにジャンプしてそのテイストを確認してから 1 問めに戻るという意味のない全体確認をしてから順に回答を進める。ときどき残り時間を確認し、時間めいっぱいで最後まで解き終わるペースらしいと現状認識。その調子で設問の大半を「フクザツな理論と経験に裏打ちされた単なるカン」で解き進める。
試験終了時刻 10 分前。残り時間 10 分というメッセージを横目にあと 10 問ほどを黙々と解き進める。最後から 5 つほど前の設問が暗号化鍵の問題。出発前に解説動画を見といてよかったと思いつつ、やけに難問で正解を見いだせず、ここで初めて回答スキップし、100 問めまで到達してからその暗号化設問に舞い戻り、メモ用紙にみっつの鍵の絵を書きながら思案してようやく回答。ここで残り時間 3 分。
未回答がないことをざっと確認してから潔く (観念して) 試験終了ボタンをクリック。ダメ押しに出てくるもうひとつの終了ボタンをクリックすると目の前で採点が始まる。結果は 675 点……ハイ、履歴書に書ける国家資格ひとつ、いただきましたー!
試験終了後の採点結果に表示されるカテゴリ (系) 別の点数はまともに記憶しないまま試験会場を後にし、ノンキに昼餉にありつく。試験終了後 1 時間ほどで試験の結果が IPA のサイトからダウンロードできるという連絡が届き、昼餉を取った店を出てから喫茶店に河岸?を変え、ノート PC を開いて試験結果を確認。いつまでたっても会社行かない不良社員。
結果
得点
下記は、過去問と本試験の結果。試験本番には、正答率や難易度でスコアを調整する採点方式が適用されているらしく、1 問が 10 点ではなくて、設問によって点数に重みづけの差異がある。過去問との単純な比較ができないので少々わかりにくい。
平成 21 年の過去問の「中問」というのは、当時存在した「4 つの設問を持つ長文読解問題」のことで、CBT 方式導入に伴い廃止された。ちなみに、中間 (ちゅうかん) ではなく中問 (ちゅうもん)。
| 過去問 (平成 21 年) | 過去問 (令和 5 年) | 本試験 | |
| ストラテジ系 | 22 | 25 | 595 |
| マネジメント系 | 15 | 17 | 615 |
| テクノロジ系 | 31 | 33 | 700 |
| 中問 A | 2 | - | - |
| 中問 B | 3 | - | - |
| 中問 C | 4 | - | - |
| 合計 | 77 | 75 | 675 |
総合得点で 600 点以上が合格ラインで、加えて各種目 (系) がいずれも 300 点以上であることという条件がある。過去問の正答率よりも本試験の正答率のほうが下がるのが一般的。
総評
- IT パスポートの各種目の平均圏内に収まる。とりわけテクノロジ系は平均より高めの得点で、ストラテジ系の得点の低さを補ってなお余りある。
- 3 種目の平均よりも総合評価得点が高く、高得点の設問に正答できたものと予想。
- ストラテジ系はそもそも最新用語の導入が激しく高得点になりにくい種目で、それでも平均圏内なら何の文句もない。
- そもそも新旧 15 年の開きがある過去問たったふたつだけ解いて、そのどちらも正答率がほぼ同じで、そのまま合格するというのは離れ技もいいところ。
- 日頃の実務経験の実力が実を結んだ結果……ということにしておこう、ヨシ!
勉強時間
受験に直結する勉強時間に限って振り返ると;
- コンパクトな演習問題集の通読:10 時間。
- 演習問題集の再読:途中で投げ出すまで 2 時間。
- YouTube の解説動画を寝床で聞く:寝落ちした時間は差し引いて 2 時間。
- 通勤電車の中で解説動画を聞く:2 時間。
- 年末年始の休み中に用語集を通読;5 時間。
- 平成 21 年の過去問とその復習:3.5 時間。
- 令和 5 年の過去問とその復習:3.5 時間。
- 不明用語を深追いするための生成 AI 相手の壁打ち:7 時間。(実はエンドレス?)
上記の時間を合計すると 35 時間。一般的に「IT パスポート合格に必要な時間」は諸説あるがだいたい 50 ~ 180 時間と考えればよいらしいので、それよりも圧倒的に少ない時間で合格したことになる。明確にカウントしていないであろう時間を含めても、合格に必要な時間とされる説の下限の 50 時間くらいか。
業務上の興味範囲で気の向くまま手にして積読・乱読した数々の書籍の影響も大きいはずだが、その読了にかけた時間はいちいち計測していない、プライスレスならぬタイムレス。
投資
受験対策のために入手した参考書は占めて 3 冊。書名は伏せてその特徴のみ紹介。
- コンパクトな演習問題集。新書版 256 ページ、1,408 円。毎日の通勤電車の中でラクに読める。
- 用語解説のみに絞った参考書 (お題もズバリ「用語集」)。A5 判 320 ページ、1,650 円。比較的薄いのでこれも苦もなく持ち歩ける。
- 対象用語をすべて網羅したゴリゴリの参考書。A5 判 592 ページ、2,200 円。分厚くいので持ち歩く気にはなれない。
通読したのは演習問題集と用語集のみ。残る「ゴリゴリの参考書」は限定特典のマグネットブックマーカー (しおり) 欲しさに買ったという不純な動機で入手。用語や概念の確認用に辞書的に使うものと自分にひたすら言い訳したが結局ほとんど出番なし。調べたい用語を参照しようとして索引を紐解くと参照ページと実際の参照先が 1 ページずれており、毎年の頻度で改定しているので緻密な更新が追い付かなかったのだろうと出版業界の激戦ぶりにそっと思いを馳せる。
そのほか、前から言っている繰り返しだが積読・乱読した数々の書籍があり、そのお値段はプライスレス。
そして忘れてはいけない受験料 7,500 円。あァそれと受験日当日にプリントアウトして持参する確認票のコンビニプリント代 10 円。よって、ここまで総額 12,768 円ポッキリ。
主観的に締めくくり
もともと資格の類にはまったく興味がなかったのですが、そんなつまらない思い込みも時が立つと薄れ、「資格のひとつふたつ、ちょっと受けてみようかな」という心境になっていた頃に、書店で本を物色していてその IT パスポートの参考書が目に留まりました。コテコテの IT エンジニア向けの資格ではなく、初学者が最初に受ける IT パスポートはちょうどよさそうでした。それから 5 か月の時を経てイッパツ合格キメまして、これはもう日頃職場で散々あれこれやった (やらされた?) 業務経験が実を結んだもの、と結論付けてひとり密かにほくそえんでいます。
ただ、実際には、カンタンに合格したとは内心これっぽっちも思っておらず、状況に応じた臨機応変な動きを積み重ねていました (人はそれを「場当たり的」と言います)。そのあたりを締めくくりと称して語ってみます。
出題内容に面食らう
書店でゲットした小さな演習問題集を読み始めて、のっけからいきなり IT 技術とはだいぶ趣が異なるビジネスモデルとか組織論がポンポン出てくるので驚きました。そんなものは非技術系のサラリーマンが読むビジネス論とか自己啓蒙書の話題ですから。エンジニアには無縁とまでは言いませんが、技術職はまず「手に職をつけて」からやがて管理と経営を学ぶ (あるいは現場に残り、管理には進まない) のが自然なのに、未来に必要となる知見を同じくらいの重きを置いて出題範囲にしているので、初学者にとってはけっこう難しい話だろうというのが正直な感想です。損益分岐とか売上と利益なんて簿記の世界じゃないですか。
その出題範囲の方針も、いわば「IT やってると否が応でも管理も経営も直接・間接を問わず接することになるので、ちゃあんと知っておいてね」という資格の背景思想の現れ。大学の一般教養、つまりリベラルアーツみたいなものかと膝を打ちました。俄然、受験したくなりましたた。
同時に、「コレ、受けたら合格するだろうな」と直観しました。長年の業務の延長と脱線で、本だけは無節操に読んでおり、演習問題集に出てくる用語の多くが「それ、本で読んだぞ」な用語のオンパレード。職場のタスクと人の管理の悩みの解決のためにプロジェクト管理の本を読んだ。なんだかんだで取引の話は身近に必ずあるので気づけば会計の本も読んだ。社内の売上データベースの面倒も見たりしていて気づけばデータベース読本も読んだ。数字の集計にのめり込んで Excel 教本とか BI 系の解説書も読んだ。ぜーんぶ試験の出題範囲にロックオン。傲慢にも「勝てるな」と内心思いました。賢者は「勝てる戦いをする (負けるとわかっている戦いはしない)」と言います。その解釈はいろいろですが、勝てる点は確実に、堅実にゲットしておくべき。俄然、受験したくなりました。
受験対策は日頃の業務の応用
だからと言って対策まったくなしの手ブラで受験するほどの度胸はなく、逆に特性不安のほうが大きいのがワタシという人間です。受験するのも対策を始めるまでずいぶんチンタラし、やがて重腰を上げて対策に取り組み……その後の経緯は前述のとおり。
改めて自分の受験対策を振り返ると、初学者向けに語られる模範的な対策法とはだいぶ乖離した、自分のレベルと環境的制約に合わせた教材の選択と、自分の実力の実情に応じた状況判断の小刻みな積み重ねをしていたなあと思います。普段の仕事での対応を試験対策に応用したも同然です。しまいには「受かっても落ちてもネタになるからいいか」という意味不明な開き直りで対策の幕を閉じるという……まぁ、イッパツ合格したからいいか。
とてもではないが万人にはオススメしづらい勉強法です。自分にはこの取り組みかたが最善で最適だっただけ、とも言います。まったくの初心者、初学者だったら、ゴリゴリの分厚い参考書を熟読するのが正攻法なのでしょうが、自分は幸か不幸か?業務経験と耳学問があったので、コンパクトな演習問題集で全体のテイストを掴み、幅広い用語の知識が必要とされる試験なので用語に絞った参考書を通読するのがちょうどよかったわけです。なので、自分の場合は、未来のキャリア形成のための資格取得ではなく、過去の経験の積み重ねで会得した実力の測定だったというのが受験の実態だったと思います。
もっと多くの過去問にあたり、誤答の復習をシッカリやっとけば本試験の得点は高くなっていたかもしれません。ただ、高得点争いはただの背比べでしかなく、合格するのが目的なので得点を上げる対策は自分には不要でした。たとえば 90 点を 95 点に上げるための努力と労力は、50 点を 90 点にするために必要な努力と労力よりもずっと多くなるし、そもそもその必要があるのか?というこれまたビジネスシーンで遭遇する命題と共通の考えです。社会人やっていると「最小限の労力で最大のパフォーマンスを出す (その最大は絶対的な最大ではない)」という考えが重要ですから。
直接の投資と時間だけを見ればコストパフォーマンスが高いように見えますが、その中には含まれない、自分の過去の業務従事時間と、何度も言っていますが積読・乱読した書籍の量を考えると……ぜんぜんコスパよくないぞ!
受験を通して得たものは
そんな IT パスポートですが、なかなか侮れないというか、よく練られた試験だと思いました。膨大な量の最新またはトレンディな IT 用語の暗記力を問うように見えて、実は概念の理解を評価する設問だったように感じました。用語を知っているかどうか以上に、設問文で示される前提条件や業務上の状況を読み取り、「この場面では何が問われているのか」を正確に理解できるかどうかを見る設問で構成されていた気がします。資格試験というのは、求める実力が備わっている前提で、できるだけ多くの合格者を輩出するのが本来の理想だと考えれば、IT パスポートはその理想に則っているように感じました。カテゴリ別の足切りラインが低めなのは、おそらく「最低限このくらいは知っておいてほしい」というレベルを、想定される受験者の実情を考慮して高くしていないという配慮だと思います。それはきっと IPA の良心というか深慮遠謀です。たぶん。きっと。
この手の「ある分野における資格の登竜門」のような資格は「役に立たない」と言われがちで、IT パスポートはそのかっこうの標的となっているようです (簿記 3 級などもそんな扱いされますよね)。ですが、そこはなんてったって IT 業界のリベラルアーツ。かつてはその「役に立たない」説を耳にしても「そんなことはないんじゃないか」と漠然と思うだけでしたが、今は実体験に根ざした深い理解に基づき「そんなことはない」とハッキリ言えるようになりました。同じように受験して資格を得た人に会ったら、相応のリスペクトを心に抱きながら会話できるに違いありません。
↑という、資格そのものと同じかそれ以上の価値のある見解を得られたのが IT パスポート受験の収穫だったかもなあ……と勝手にひとりごちたところで、今回はここまでにしとうございます。いやあ、落ちて恥かかずに済んでよかったよかった……。