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ひとり情シス奮闘記

情シスなら一度は悩む ≪名前≫ のネタ帳

情シスという仕事がら、ある共通の特性を持つ複数の「何か」を管理しています。IT 機器とひとくちに言いましても、その内訳はサーバーであったりクライアント PC であったり、果ては複合機などを含む同一ネットワーク上に存在する機器の総体だったりします。そんなハードウェアに限らず、アカウントのような「人の属性」もやはり管理の対象です。

複数のモノの管理をするうえで、その個々のモノを呼び示すにあたって名前をつけてあげると何かと管理しやすくなります。規則性がないネーミングよりも、何らかのシリーズという共通項のもと名前を付けてあげたほうが、覚えやすいし管理しやすくなるというものです。思いつきでテキトーにネーミングして後で困る事態に陥ります。

手っ取り早くその機器の型名をそのまま呼称にしがちですが、それだと同一型名の複数の機器の区別ができません。そこにあるだけの存在に過ぎない小さな機器、たとえばスイッチング HUB のようなものはアタマから順に番号を振って済ませても特に支障はありません。ですが、サーバーなどになると呼び示す機会も多いので数字に毛が生えた程度の無味無臭で味気ない名前ではなくもっと親近感が湧く名前にしたくなるというものです。

ということで、行き当たりばったりなネーミングで済ませるのは早い時期に脱却を目論み、命名ルールを採るようになりました。

世間一般での事例

IT 機器の命名規則を紹介する事例は Web サイトで紹介されており、いわゆるひとつのググるといくつか見つかりますから、自分もあちこち探したことがあります。一般的に流布している命名シリーズをまとめてココにブチ挙げてみたいと思います。

シリーズ 説明
地名 たとえば世界の首都名:ワシントン、ロンドン、ウェリントン、オタワ、北京、東京、キャンベラ、ダブリン、レイキャビク、ニューデリー、カイロ……などなど。首都に限らずよく知られている地名でもよい。ちょっと懐メロみたいですがロンドン・ワルシャワ・ニューヨークとか。
太陽系 Mercury、Venus、Earth、Mars、Jupiter、Saturn、Uranus、Neptune……当然ですが太陽 (Sun) を入れても 9 つが限度。
果物 Apple、Orange、Peach、Cherry、Pineapple、Banana、Pear、Lime、Lemon、Grape、Grapefruit、Muscat。語尾が同じベリーシリーズで Strawberry、Raspberry、Blueberry、Blackberry。メロンシリーズで Melon、Watermelon、Muskmelon。さいごにもっかい懐メロでキミたち Kiwi、Papaya、Mango。
星座 いわゆる 12 星座で Aquarius、Aries、Cancer、Capricorn、Gemini、Leo、Libra、Pisces、Sagittarius、Scorpio、Taurus、Virgo。88 星座ならもっとあるけど面倒なので割愛。
宝石 天然石となるとべらぼうな数になるが、誕生石に絞れば 12 個……いやどうも月によっては誕生石に諸説あるようで、Garnet、Amethyst、Bloodstone、Aquamarine、Diamond、Emerald、Pearl、Alexandrite、Moonstone、Ruby、Peridot、Sardonyx、Sapphire、Opal、Tourmaline、Topaz、Turquoise、Zircon。聞いたこともない宝石の名前もチラホラですが、いずれにしてもすべて貧乏カネなしのワタシには無縁の存在。
Red、Blue、Green、Yellow、Pink……戦隊ヒーローみたいだ。数に困ることはないほどたくさんあるがマイナーな色にすればするほどわかりにくくなる。
カクテル Martini、Gimlet、Tom Collins、Matador、Rusty Nail、Manhattan、Tequila Sunrise、Nikolaschka、Balalaika、Spumoni、Spritzer、Moscow Mule、Mojito、Daiquiri……ああ見ただけでイイ感じに酩酊しそうだ!
神話の神々 ギリシャ神話のオリンポス 12 神だと Zeus、Hera、Athena、Apollon、Aphrodite、Ares、Artemis、Demeter、Hephaistos、Hermes、Poseidon、Hestia (地位を譲って Dionysos)。ローマ神話名だと Jupiter、Juno、Minerva、Apollo、Venus、Mars、Diana、Ceres、Vulcan、Mercury、Neptune、Vesta (Bacchus)。北欧神話とか日本神話など他にもいろいろあるが面倒なのでココまで。
日本帝国海軍艦船 第二次世界大戦中の日本海軍の艦船名。戦艦だと山城、伊勢、日向、長門、陸奥、大和、武蔵。空母なら赤城、加賀、蒼龍、飛龍。戦艦は日本国内の山または川から空母は神話に登場する動物または山岳名から命名したのだとか。巡洋艦と駆逐艦まで辿るともっといっぱいある。
モビルスーツ 某アニメ『ガン〇ム』に出てくるアレ。どのモビルスーツ名を採用するかで世代がバレそう。

このほかにも、「どこかの国の皇帝とか武将の名前」、「やたら登場人物が多い小説の登場人物」などまぁいろいろあるようです。試作機やソフトウェアの開発コード名にシリーズものの名前を付与することがありますが、それと同じような感じです。macOS の各世代の名前って確かアニメ『トイ・ストーリー』から取っていなかったっけ。UNIX 用のド定番エディターとされる Emacs の日本向けローカライズバージョン Mule の開発コード名が確か「源氏物語の巻名」だったかな (古い話)。

で、パセイジはどうしてきたかというと、情シスであるワタシの独断と偏見と思い付きで、アレコレ悩み軌道修正しながら命名ルールを決めてました。複雑な理論と経験に基づく単なるカン……とも言います。さァココから先は我が社の事例をどうぞ。

採用例:アメリカの地名……に見せかけて実は

今年に入って社内サーバーを一斉に入れ換えましたが、それまでに社内に設置していたサーバーの名前はしばらくの間「アメリカの地名」から採っていました。Chicago、Dallas、Miami、Atlanta、Houston、Phoenix、などなど。

口に出して言うとコテコテにアメリカの地名ですが、実はコレ結果論。命名シリーズ確定に至った経緯がありまして、ある日新しいサーバーを社内に設置するときに、何の気なしに同僚に「サーバーのなまえ、何がいいかな︖」と聞いてみたら、その同僚が「ダラス」と即答しまして、めでたくそのサーバー名は「Dallas」に決定したのでした。

調べてみると、この「ダラス」というのはいちおう実存する潜水艦で、その大きさと規格から「ロサンゼルス級」というクラスに分類されるのですと。当然、同じクラス内に他の潜水艦もありますから、台数がいくつもあるサーバーの名前として採用するには充分な数です。

このロサンゼルス級潜水艦、一部人名が採用されてはいますが、だいたいアメリカの地名が名前に採用されています。以後、諸事情により増殖したサーバーまたは社員さんが共同利用する共有機 (サーバーに近い使われかたをするもの) には次から次へと「なんかアメリカの地名っぽい (けど実はアメリカの原子力潜水艦の) 名前」が付与されることになりました。そしてこれも結果論ですが、地名というのは割と呼びやすいし覚えやすいし、性質もニュートラルですので、サーバー名にはもってこいだったかもしれません。

なお、余談ですが。そのくだんの『レッド・オクトーバーを追え!』のクライマックスでは、ダラスの艦長が艦を離れているときに副艦長が操船の指揮を執ってソ連の原子力潜水艦との攻防を繰り広げるシーンがあり、「副リーダーというのはリーダーの補佐と思われがちだけど、(本当に補佐したいとなったら) リーダーと同等の実力・スキルが必要なのかな」というちょっとリーダーシップ論めいたことを思ったのでした。

採用例:国産車の名前

かくしてサーバー名の命名シリーズはなんとなく方針が固まりましたが、ネタとしての命名シリーズは複数考えていました。たとえばサーバーとは異なる別の機器類に対して別系統の命名をしたくなったりする可能性に備えておきたかったわけです。

そのうちのひとつが国産車の名前。現行モデルまで含めるとかなり多くの車名があります。海外の車名まで手を伸ばさなくても、ネタの数としては充分です。往年の名車に思いを馳せるのもオツなものです。

今年に入ってサーバー類をいっせいに入れ換えたのですが、入れ換えにあたり新旧サーバーが同一セグメントのネットワーク上で稼働することになり、同じ役割を持つ旧サーバーの名前を新サーバーに継承というのは不可能でしたので、新サーバーには別系統の命名をしないといけませんでした。それで今回は国産車の車名から取ることに決定。

車名って、メーカーが知恵を絞って考えだしたり、開発・マーケティングなどの中の人たちがその車のコンセプトにぴったりの言葉を探し宛てたり、場合によっては造語まであつらえているようです。そのせいか、呼びやすいし親しみやすいしニュートラルという、前回の地名と同等の性質を持っていると思います。

しかし、調べてみると国産車、かなりの数があります。この中から「呼び表しやすい」名前を選定するにあたり、面倒なので ChatGPT に名前の一覧を放り込んで選んでもらいました。「音節 3 つまでのもの」など、AI なりにうまく選定基準を判断して候補をピックアップしてくれました。ラクでエエわー。

何を採用したかは公然のヒミツですが、たまたま星座の名前になったとだけココに白状しておきます。

ボツ案:銃器メーカー名

男子たるもの、銀玉鉄砲程度あっても、人生において一度は銃器に触れる機会があります。映画やドラマでも銃器の名称がバンバン出てきたりしており、有名どころの銃器メーカーは割と世間に知られているかもしれません。

一般市民が銃を持つことはない日本ではピンときませんが、世界的にはかなり多くの銃器メーカーが存在します。ネタ帳として調べてみました。

銃器メーカー、わりと創業者または主力開発者の人名か、おそらく創業の地から取られているものが多いようです。そう考えるとサーバーなどの名称にはよいのかもしれません。しかし、こうして眺めてみると、たまたまでしょうが強い語感の名前が多い気がします。いずれも無駄にカッコよいですよね。

ただ、呼びやすさは問題なくても、親しみやすいかというと微妙どころかだいぶアウトな気がしなくもありません。調べはしたけど採用されることはないと最初から思っていた究極のボツ案です。

番外:鳥の英語名

厳密にはサーバーなどの機器名ではなく別の事情に使ったのですが、鳥の英語名というのを命名シリーズとして使っていたことがあります。

昔は自分の机の上の PC 以外に、画面撮りとか多言語環境の UI 確認のための作業用の共有機をいくつも作っていたことがありました。作業 PC でも AD に登録したドメインユーザーでログインできなくもありませんが、作業環境を同じにしておいて誰が作業しても同じ環境にしたいのにドメインユーザーでログインするとユーザーごとに環境が一変します。それで、何らかの作業用ユーザーをローカルユーザーとしてその共有 PC に登録していたのですが、こういうときってユーザー名を「user」とか「aaa」みたいなのにしがちです。それじゃあつまらんということで、鳥の英語名をローカルユーザーにしていました。

今にして思えば、どの作業 PC でも同じ名前にしておいても実害はなかったものを、なぜか当時はムキになってマシンごとに異なる鳥の英語名をアテていました。ずいぶん無用な労力を割いたなあ、次からは共通の名前を使おう……と思うまでもなく、今では昔に比べて共有 PC を使う機会が激減しており、考え直したところでそれが活かせる機会はなくなってしまったのでした。

隠し案つまりボツ:アイルランド人名

アイルランドという国はちょっとしたアクセント記号があるとはいえ普通にアルファベットを用いる国ですが、その読みかたは極めて独特のようで、日本人にとってなじみがありそうなヘボン式のローマ字読みはおろか、英語またはその他の言語の読みかたすら通用しません。ほかの英語圏の人にとっても同じようで、某動画サイトで「アイルランドの人名はこう発音するのよ」と紹介する動画が流れているくらいです。

ネタとしては実に面白いですので、紹介したいと思います。実は普通に読めるアイルランド人名もたくさんあるのですが、ココでは特に読みにくいものを選りすぐってみました。どぞっ。

……どどどどどどどどどどどうです? 言われなければ誰も正しい読みなどできません。秘密のサーバーみたいなものにはうってつけかもしれないなと思いましたが、何だよそのヒミツのサーバーって、読めるものにしないとみんな不便だろうが……ということでこちらもまたネタとして用意はしたけど採用される可能性は低そうです。

腹案:フォネティックコード

無線通信がこの世に現れた頃、当時は今に比べて通話品質が低かったこともあって、相手が何と言ったかを正確に聴き取れなかったりしたと思われます。それで、通信や電話の際にアルファベットを明確に判別するために、それぞれのアルファベットに対して付与するコード (符号) が考案されました。フォネティックコードと呼ばれます。厳密には数字にもコードがあるようですがここでは割愛。

これまた映画の話で恐縮ですが、たとえば戦争シーンで複数の部隊を「アルファ中隊、ブラボー中隊……」に分けて進軍したりするシーンをときどき見かけます。フォネティックコードを使って部隊を組み分けしている、ということですね。戦争映画に限らない、航空無線通話時にフォネティックコードを使うシーンがあります。航空管制官を描いた映画『狂っちゃいないぜ』でも、航空管制官と航空機のパイロットの間で取り交わされる会話の中でフォネティックコードがバンバン使われていたと記憶しています (専門的だったせいか日本語字幕翻訳に監修者がついていたような)。

ワタシの場合も、一時的に用いる名称として使うことがあります。テスト用ユーザーを 3 つくらい用意するときに順に Alpha、Bravo、Charlie ……みたいに。

名前にはクセがないものがちょうどよい

いろいろ紹介しましたが、サーバー名のようにみんなが使うモノに対しては、「呼び示しやすい」「親しみやすい」「物騒だとかそういう余計な連想をしなくてよいくらいのニュートラルさを持つ」名前にするのがちょうどよい……という結論です。命名した人間のしょうもない趣味性が炸裂すると確実にヒンシュクを買いますので、そこは気を付けたほうがよいかと思います、ハイ。

とか言いながら、映画やら銃器やらと、充分にワタシ個人の趣味性が混入した記事になってしまい、サイゴまでお付き合いいただいて恐縮です。今回はここまでにしとうございます。